延岡市の不祥事、議会が調査へ初めて百条委員会設置
【宮崎】延岡市の、組織ぐるみでの公文書改ざんや、備品の窃盗などを受け、市議会(松田満男議長)は29日、地方自治法100条に基づく調査特別委員会(百条委)を設置した。事件を起こした職員や業者から事情を聴き、経緯を調べる。議会事務局によると、記録が残る限りでは、同市議会で百条委が設置されるのは初めて。
9月定例会最終日のこの日、最大会派「自民党きずなの会」の北林幹雄議員ら3人が連名で設置の決議案を提出した。
調査対象は①総務課職員の備品窃盗②上下水道局職員の虚偽公文書作成等、の2点。北林議員は「市の事件の経緯の説明は足りず、議会として解明すべきだ」と提案理由を述べた。
これに対し、設置に反対する議員は「職員の処分は終わっており、市の説明で十分」「警察の捜査の結果を待ってからでもいい」と述べた。
一方、賛成議員は「警察は犯罪に当たるかどうかを調べるのが仕事で、議会が調査権を行使するのは差し支えない」「いまのままでは市民の疑問に答えられず、さらなる事実確認が必要」と主張した。
起立採決の結果、賛成多数で決議案は可決され、百条委の設置が決まった。委員長は北林議員、副委員長は甲斐行雄議員(友愛クラブ)で、議員8人で構成する。
延岡市は今年8月、計7人の懲戒処分を発表した。
総務課で広報を担当していた主任主事(当時)が、ギャンブルで作った借金返済のため、備品の望遠レンズなどを盗み売却。同僚にウソの説明をしていたとして、懲戒免職になった。上司も減給になった。
上下水道局では、きちんと契約を結ばないまま業者に工事をさせてしまい、代金を支払うための書類をあとから偽造。点検や調査業務の委託でも随意契約のルールに違反し、5人が停職、減給、戒告となった。
市は、7人のうちの4人について、窃盗や虚偽公文書作成・同行使などの疑いで、県警延岡署に刑事告訴・告発した、と前日明らかにしていた。
一連の責任を取り、読谷山洋司市長も減給30%(3カ月間)、山本一丸・副市長も同10%(同)となった。
また、市議会は29日の本会議で、上下水道局の不祥事を考慮し「事務処理が不適正」として、2022年度の下水道事業の会計決算を「不認定」とした。議会事務局によると、不認定は1959年度以来。
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延岡市職員の不祥事について、市議会が異例の、百条委設置に踏み切った。「市の説明を聞いても、なぜそんなことをしたのかよく分からない」という意見が多かったからだ。
市は8月に上下水道局での公文書偽造を発表。その時は、「工事を要望された際、相手方から特定の業者を使うよう求められ、それを断り切れなかった」「契約なしで工事が始まり、つじつまを合わせる中で起きた」などと説明した。
しかし、組織ぐるみになった経緯などは依然、不透明だ。朝日新聞社は情報公開請求したが、開示された書類のほとんどが「公開すると支障を来す」の理由で黒塗りだった。
百条委の権限は強力だ。慎重かつ、存分に解明してほしい。議会が「伝家の宝刀」を抜いた以上、市も市民の疑問に答えるだけの、より踏み込んだ説明が求められる。