インボイス直前、後悔する野田元首相「11年前、決め切れていれば」

有料記事

聞き手 編集委員・伊藤裕香子

 消費税の新しい経理方式のインボイス制度が、「複数税率のもとでの必要な措置」(鈴木俊一財務相)として、10月から始まる。税率を5%から8%、10%へ2段階で引き上げることを最初に決めた民主党政権の野田佳彦元首相はいま、「後悔の念」を抱く。インボイスはなぜ始まるのか、「後悔」から次世代に伝える教訓に何があるのか、聞いた。

 ――インボイス制度が始まる、いちばんの理由は何でしょう。

 「消費税率を10%へと引き上げることは、2012年に、自民党、公明党と政権を持っていた民主党で決めました。税率の引き上げで負担が増える所得の低い方々への対応には、税金の控除と現金の給付を組み合わせた『給付付き税額控除』がいいと私は思っていました。けれど残念ながら、その後民主党は政権を手放し、与党となった自公の協議で軽減税率へと進みます。小規模事業者泣かせのインボイスは、軽減税率になったことで減ってしまう1兆円以上の税収を穴埋めする財源の一つとなり、導入に至ります」

 ――軽減税率が選ばれていなければ、インボイスは始まらなかったのですか。

 「始まっていないですね。11年前に首相として深く制度設計をやって、給付付き税額控除に決め切れていたらよかったのですが。もうちょっと頑張っておけば、という後悔の念があります。インボイスは税率の認識に違いがないようにするためと言いますが、軽減税率が入って4年後という時間差で始まります。合理的ではないと国会でも論陣を張ってきましたが、スタートするいまは、マイナンバーカードをめぐるような混乱がなく、円滑にいくかどうかを心配しています」

「いまも間違っていないと信じています」

 ――野田さんは、なぜ首相自ら主導するかたちで消費税を増税したのですか。

 「人口減や高齢化が進む日本…

この記事は有料記事です。残り1681文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
伊藤裕香子
論説副主幹
専門・関心分野
税財政、くらしと消費、地方経済