ノーベル生理学・医学賞は誰に? きょう発表、コロナワクチンに注目

野口憲太

 今年のノーベル賞の発表が、2日から始まる。初日は生理学・医学賞で、日本時間午後6時半に発表が予定されている。受賞が有力視されている研究とは?

 昨年は、数万年前のゲノム(全遺伝情報)を調べる「古ゲノム解析学」の業績に贈られた。現生人類が、かつて近縁種と交配していたという「発見」の画期性が高く評価された。

 発明家アルフレッド・ノーベルの遺言では、生理学・医学賞を贈るのは、この領域で「最も重要な発見(discovery)をした者」と記されている。

 2000年以降だけ見ても、受賞理由に「発見」が含まれないのは1回のみ(2010年「体外受精の発展」)で例外だ。今年は、どんな発見に贈られるのか。

 有力視されるのは、新型コロナウイルスに対して実用化された「mRNAワクチン」だ。遺伝情報の断片「mRNA」を使って免疫をつける技術で、数年で国際的な賞を取り尽くした状態だ。

 実用化のカギは、mRNAの合成時に一部を別のものに置き換えると、過剰な免疫反応を避けられるという発見だった。独ビオンテック社のカタリン・カリコ氏らの名前が挙がる。

 「オプトジェネティクス(光遺伝学)」も評価が高い。

 藻の一種から発見された光に反応するたんぱく質を使って、動物の神経細胞の活動を光で操る手法。脳科学などで活用される。米スタンフォード大のカール・ダイセロス氏が第一人者だ。

 ただ、mRNAも光遺伝学も、発見を応用して新しい技術を「発明」したことの画期性も強い。そのため、発明も重視する傾向がある化学賞の可能性もある。20年の化学賞を受けたゲノム編集の技術が好例だ。

 生物が生きる仕組みの理解につながる基礎的な「発見」としては、DNA配列によらずに遺伝子のはたらきを制御する仕組み「エピジェネティクス」や、細胞内の物質輸送をつかさどる「モーターたんぱく質」の研究も注目される。

 日本の研究者では、細胞内の品質管理の仕組み「小胞体ストレス応答」で重要な因子を発見した京都大の森和俊氏や、細胞同士の接着分子「カドへリン」を発見した理化学研究所の竹市雅俊氏、免疫に関わる「制御性T細胞」を見つけた大阪大の坂口志文氏の受賞に期待が高まる。いずれの業績も、ノーベル賞の登竜門と言われる国際賞を受けた。

 睡眠に関わる「オレキシン」を発見した筑波大の柳沢正史氏は今年、注目度の高い研究に贈られるクラリベイト引用栄誉賞を受賞した。「科学界のアカデミー賞」とも言われるブレークスルー賞も決まり、評価が高まっている。(野口憲太)…

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