岸田政権、人権担当の補佐官が不在に 首相「公約」ポスト消滅の波紋

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二階堂友紀

 岸田文雄政権で新設された「国際人権問題担当」の首相補佐官が、2年足らずで不在となった。岸田首相が自民党総裁選で公約に掲げた「肝いりポスト」だった。日本外交のあり方が問われる深刻な人権課題が山積するなか、国際社会に誤ったメッセージになると懸念する声もある。

 首相補佐官は内閣法で5人以内と定められ、重要政策について首相にアドバイスする。今回の内閣改造で任命されたのは、新任・留任あわせて5人。女性活躍や国土強靱(きょうじん)化の担当が維持された一方、「人権」はなくなった。岸田政権が衆院解散・総選挙を経て本格始動した2021年11月から、中谷元・元防衛相が務めてきたポストだ。

 人権補佐官は、岸田首相が21年9月の総裁選で「香港の民主主義・ウイグルの人権問題に毅然(きぜん)と対応」(政策集)するとして新設を約束した。首相は22年1月の通常国会でも「同盟国・同志国と連携し、深刻な人権問題への対処にも、私の内閣で初めて任命した専任の補佐官と共に、しっかりと取り組む覚悟です」と述べていた。

補佐官不在「思い入れの薄さの表れ」

 国際社会では「人権」が外交…

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この記事を書いた人
二階堂友紀
東京社会部
専門・関心分野
人権 性や家族のあり方の多様性 政治と社会
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    佐橋亮
    (東京大学東洋文化研究所教授)
    2023年9月25日23時20分 投稿
    【視点】

    一言で言えば、ショックです。岸田政権は(全体的な哲学がよく分からないところはあるものの)問題の存在が明確なところには真摯に取り組む政権だと思っていました。それなのに、「あえて」人権の名前を冠した首相補佐官ポストを今なくす理由がわかりません。

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    市原麻衣子
    (一橋大学大学院法学研究科教授)
    2023年9月26日9時44分 投稿
    【視点】

    日米両政府ともに人権外交の機運がほとんど消えてしまったことを反映した動きだと思います。もともと岸田政権の国際人権問題担当首相補佐官設置は、バイデン政権が人権・民主主義を外交の中心に持ってきたこと、および自民党内保守派が中国政府のウイグル・香

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