第3回「自分に価値あるか」 48歳専業主婦、夫婦2人の生活で味わう孤独

有料記事わたしの孤独

長野佑介
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 2階の寝室で五つ年上の夫が寝入っている午前0時ごろ。中部地方で暮らす女性(48)は1階のリビングでペンを握る。

 「きょうも1日寝てた」「日曜日、夫が仕事でいなくてうれしい」「生きててよかったって思えるのはいつ?」

 A4の紙に向かって思いを率直に書き付ける。いま、そんな胸のうちを明かせるのは、夫でも、両親でも、友人でもない。週1回、定期的に通う精神科医だけだ。

「孤独・孤立はだれにでも生じうる」として、その対策を行政の責務とする法律が来春、施行されます。連載「わたしの孤独」では、独りぼっちの体験談からその解決の糸口を考えていきます。

 20年近く前に発症したパニック障害に加え、5年前、うつ状態と診断された。これまでやってきた掃除・洗濯・炊事といった家事が一切できなくなった。

 公務員の夫がするようになり、女性は1日をソファやベッドに横たわって過ごす。通院をのぞき、外出はほぼしない。

 「事情を知らない人からみれば、私は専業主婦にしか見えない。でも、実際は誰とも交流せず、家にひきこもる日々。自分には生きる価値があるのかなって思います」

「家のことちゃんとできたら、働いていいよ」

 結婚したのは、看護師として働いていた28歳の時だった。

 周りがどんどん結婚していき、あせっていた。知人に紹介されたのが、公務員だった夫だった。交際から半年で結婚した。

 結婚生活が暗転したのは、1…

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    島沢優子
    (ジャーナリスト・チームコンサルタント)
    2023年10月24日13時39分 投稿
    【視点】

    ひとりでいる孤独より、二人でいて感じる孤独のほうが厄介なんです。ひとりなら自分のマインドセットを変えればいい話ですが、相手がいる場合はそうもいかない。しかもインタビューに協力した女性は自尊心を相当傷つけられています。余計なお世話ですが、彼女

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年10月24日20時3分 投稿
    【視点】

    この記事を読んだ方のなかに、“専業主婦”という言葉から、それと対置される“勤労女性”の姿を思い浮かべた方がおられるのではないだろうか。「女性は職業にも従事すべき」「(いや、)家事こそが女性の天職」などと、女性の自立や主婦労働の価値の問題をテ

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