八代海のアサリ復活を デジタル技術も活用 産学官連携プロジェクト

今村建二
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 アサリの産地の一つ、八代海熊本県八代市沖)で漁獲量の激減が問題になっている。産地偽装問題もあって熊本県産アサリ全体の信用度も落ちた。この苦境を脱するべく、市は産学官連携の取り組みを立ち上げる。名付けて「アサリ漁業V字回復プロジェクト」。デジタル技術も活用して、復活の一手を探る。

 市によると、八代市沖の八代海では最盛期の2008年には1264トンのアサリが取れた。すべて地元で生まれ育った「天然もの」というのも売りだ。

 だが、異常気象による大雨や海洋環境の変化で漁獲は減少し、21年は11トン、22年は10トンと低迷が続く。お隣の有明海を中心にした産地偽装問題も、「天然もの」の八代市沖では該当する案件はなかったが、同じ熊本県産として信用は落ちた。

 そこで、八代海のアサリの漁獲を取り戻し、ブランド化も図ろうと、市が3年間のV字回復プロジェクトに取り組むことにした。

 柱の一つがデジタル技術の活用だ。

 漁獲量減少の原因として、漁師が口にするのがエイやチヌによる食害だ。アサリを狙う魚を追い払うため、音波を発する機器などが試作されているが、確立された技術はまだないという。今回のプロジェクトで高専や大学、メーカーなどと連携して、実用で使える機器の開発をめざす。

 一つ一つのアサリの身を大きくするためのデータ収集にも取り組む。

 干潟のアサリは潮の満ち引きで海水につかっていない時間帯があるが、ケースに入れたアサリを干潮時も干上がらない海につるし、成長を早め、身を太らせる育成法がある。水温や水質といったデータをとって、八代沖でこの育成法が適している場所を探る。

 このほか、首都圏の消費者のニーズを探る調査なども実施し、アサリの収益向上にも取り組む。

 3年間で4200万円の事業費を見込み、初年度の約800万円を盛り込んだ補正予算案を9月議会に提案した。

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この記事を書いた人
今村建二
水俣支局長|水俣病・環境担当
専門・関心分野
地方政治、環境