ジャニーズ問題 ファンは「推し」文化を改善できる 豪研究者は語る

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聞き手・守真弓

 ジャニーズ事務所での大規模な児童の性被害が明るみに出たことに、ファンダム(ファンの共同体)が揺れている。なぜメディアも社会も性被害を見過ごしてきたのか、という重要な問題に光が当たる一方で、一部にはアイドル文化そのものを批判したり、女性ファンに責任を転嫁したりするような言説もある。ジャニーズに代表されるような男性アイドルをめでる文化というのは女性にとってどのような意味を持ち、ファンダムは社会にどう受けとめられてきたのか。そして、ファンのあるべき姿とは。東アジアのアイドル文化に詳しい豪州のマッコーリー大学のトーマス・ボーディネット上級研究員(ジェンダー研究)に聞いた。

「ジャパニーズ・プロブレム」なのか

――専門はジェンダー研究ですが、自身も長年、ジャニーズを含めた東アジアのアイドルのファンだそうですね

 「大学で日本語を勉強していた時、友達にw-inds.を紹介されて日本のアイドルの存在を知りました。その後、日本のドラマやバラエティー番組を見るうちにジャニーズの存在を知り、『ジャニオタ』になっていきました。日本の本を置いているメルボルンの書店に行っては『Myojo』や『POTATO』といったアイドル雑誌を買い込んでいたんですよ。欧米の『セレブ』は磨かれた宝石のようですが、日本の『アイドル』はまだ原石のようで、磨かれていく過程を一緒に体験できる。未知の存在で、引かれました」

――ファンとしてジャニー喜多川氏の性加害について聞いたことはありましたか

 「大学院で、日本のエンタメにおけるゲイ男性の表象について論文を書こうと資料を調べている時に、そうした告発があることを知りました。当時はまだSNSが発達していなかったので、詳しくはわかりませんでした。今回、明らかになった性加害の内容と膨大な被害者の数にショックを受けています」

――7日にジャニーズ事務所が行った記者会見をどう見ましたか

 「ジャニーズ事務所は家族経営の私企業なので、加害者であったジャニー喜多川氏と血縁のある藤島ジュリー景子氏が辞任するということは象徴的で重要なことだと感じました。たとえ、実際の被害については本当に知らなかったとしても、未成年に対する性加害についての告発に何十年も取り合わなかった。その責任はあるでしょう」

――この問題は、欧米でも大きく報じられています

 「欧米には、二つの見方があります。一つは、これはエンターテインメント産業の制度的な問題だという視点。近年、米国のハーヴェイ・ワインスタインや英国の(元司会者)ジミー・サビルなど、力と財力を持った男性たちがひどい性的虐待や性的暴行を行ってきたことが明らかになっている。この問題をそうした世界的な文脈からとらえる視点です」

 「一方で、欧米メディアの多くは、これは『ジャパニーズ・プロブレム』だと、日本のエンタメやアイドル文化に対する蔑視を含んだトーンで報じています。児童ポルノ大国、変態ニッポンのアイドル文化は危険で問題だという風に。こうした視点は議論を問題の本質からずらしてしまっています」

ファンを責める声 「ミソジニー」では

――日本エンタメ特有の点はな…

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