自民党がトリプル補選で全敗した。裏金事件の不信を乗り越えられなかった末の惨敗は次期衆院選への与党内の不安を高め、岸田文雄首相の政権運営の不透明感も増す。

 自民党が唯一擁立した島根1区で敗北が確実になった28日午後8時、茂木敏充幹事長は党本部で記者団の前に現れた。「様々な批判があり、重く受け止めなければいけない。政治の改革、党改革を進めていく」と淡々と語ると、足早に立ち去った。党本部滞在は1時間にも満たなかった。

 小選挙区導入後の1996年衆院選以来、細田博之前衆院議長が勝ち続けてきた自民王国でも、裏金事件の逆風は激しかった。首相は流れを変えようと、2度も選挙区入り。東京からも地元有力者に電話で協力を求めた。小渕優子選挙対策委員長は連日のように選挙区を回り、小泉進次郎元環境相ら知名度の高い議員が演説も重ねた。

 それでも逆風は和らがなかった。細田氏は裏金事件を引き起こした安倍派のかつての会長で、生前、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との結びつきが指摘されてもいた。裏金と教団。次の衆院選で自民候補が有権者から直接の審判を受ける二つの問題を象徴する存在が細田氏だっただけに、自民党への厳しい視線は想像以上だった。

 島根は47都道府県のうち、衆院総選挙の小選挙区で過去に1議席も落としていない、ただ一つの県だ。補選とはいえ、最強の王国での敗北は、党内に衝撃を与えている。「これが今の民意。典型的な保守地盤の島根で勝てないんだから、今選挙をしたら他も同じ結果になる」。島根1区の中心である松江市のような地方都市選出の自民中堅はため息をつく。

 だが、3補選で唯一、党が擁立した島根での勝利を敬遠する意識が与党内に広がっていたことも、また事実だ。

 「ほどほどにしないと、島根で…

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