ベネチアが来春から入場料徴収 「このままでは街がテーマパークに」

パリ=宋光祐
[PR]

 「水の都」として知られるイタリア北部のベネチアは、来春から観光客の抑制策として日帰り客を対象に5ユーロ(約790円)の入場料を試験的に徴収する。市議会が12日夜、賛成多数で計画を承認した。欧州では増えすぎた観光客のせいで住民生活に支障が出る「オーバーツーリズム」が深刻化しており、各地が対策を迫られている。

 市は中心部と周辺の島を日帰りで訪れる14歳以上の観光客に対して、オンラインなどでチケットの購入を求める。入場料徴収の対象となる期間は年間で計30日としており、春休みや夏休みの週末に設定する。観光シーズンがピークを迎える時期に有料にすることで、来訪者が集中するのを避ける狙いがある。

 世界遺産に認定されているベネチアは、国連教育科学文化機関ユネスコ)が7月、オーバーツーリズムへの対策が不十分などとして存続が危ぶまれる「危機遺産」への指定を勧告していた。10日からサウジアラビアで始まった世界遺産委員会で指定の是非が議論される。

 市の統計によると、新型コロナの感染が拡大する前の2019年には、宿泊客だけで年間550万人が訪れていた。地元の大学の推計では、日帰り客を含めた年間の観光客は2千万人を超えるという。

 19年からベネチアのオーバーツーリズムと住宅問題に取り組む市民団体「Ocio」によると、今月9日までの集計では、市中心部の観光客向けのベッド数が4万9693に上り、住民の数の4万9304人を上回った。昨年4月からの5カ月間でベッドの数は1097増えたが、住民は61人減った。

 同団体は声明で、「オーバーツーリズムは深刻になっており、住民がいなくなった穴を宿泊施設が埋めている。市民の暮らしを守ることは街を守ることになる。何もしなければ、ベネチアは野外博物館やテーマパークになってしまう」と危機を訴えている。(パリ=宋光祐)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません