インドの国名が突然「バーラト」に? モディ首相の最大の目的とは

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聞き手・伊藤弘毅
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 主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で議長国を務めるインドが、国際舞台における自国の呼称を「インディア」から「バーラト」に突然変えたと、議論を呼んでいます。バーラトとは何か。なぜ、モディ政権はこのタイミングで違う呼称を使ったのか。南アジアの政治経済情勢に詳しい、ジェトロ・アジア経済研究所の湊一樹研究員に聞きました。

 ――バーラトとは、なんですか。

 インドの公用語であるヒンディー語や、インドのその他の主要言語で広く使われる、インドを意味することばです。インド憲法の第一条には、「インド、すなわちバーラトは、諸州の連邦である」と記されています。つまり、憲法上はインドもバーラトも、国名として公の場で使えます。

唐突に使われた「バーラト大統領」

 ただ、外交の場などでは英語表記にインディアを使ってきました。そんな中、G20サミットで公式晩餐(ばんさん)会を主催したインドのムルム大統領が、招待状で自らを、「インド大統領」ではなく「バーラト大統領」と称したことから、大きなニュースになりました。

 過去に外交などの場で「バーラト大統領」などという言い回しをした例は、ほぼないでしょう。私を含め、多くの人が驚いたと思います。インドの人が英語で話す時に、バーラトを使う印象はありません。ましてやインド国外でバーラトといっても、ほぼ理解されないでしょう。

 ――地名など固有名詞の言い換えは、インドではこれまでも行われてきました。

 例えばモディ政権下では、2018年に中部の都市アラハバードの名称をプラヤーグラージに変えました。首都ニューデリーでは、ムガル帝国の皇帝の名を冠した道の名称を変えました。今回の件も、その延長線上にあると考えることはできるものの、国名まで変えようとするのはやはり驚きです。

 ――なぜいま、この名称を使ったのでしょうか。

 最大にしてほぼ唯一の理由は…

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