出版業界に必要な決断と覚悟とは 紀伊国屋書店・高井昌史会長に聞く
紀伊国屋書店と、蔦屋書店などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、出版取次大手の日本出版販売(日販)が、出版物の共同仕入れを担う合弁会社の設立に向けて動きだしました。「書店主導の出版流通改革」を掲げる新会社の狙いとは。紀伊国屋書店の高井昌史会長に聞きました。
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――業界の現状をどう見ていますか
出版物の返品率は依然として高く、取次の日販もトーハンも赤字。「地方の灯を消すな」と言われるけど、大都市でも書店がなくなっていっている。
一方、大手出版社の中には決算で最高益を出し、順調以上の経営をしているところもある。講談社、小学館、集英社、KADOKAWAの4社は、コミックやアニメ、電子書籍、それに海外事業が好調。とくにアメリカは出版の状況が非常によく、大手4社は海外需要に支えられている。ただ、その他の出版社になると、海外事業はほとんどやっていない。
――新会社では、日本の出版流通でこれまで一般的だった取次を介する仕入れではなく、書店が出版社から直接仕入れる仕組みを作っていくそうですね
返品率を下げるには出版社との交渉が必要。そのなかで当然、直仕入れも出てくる。3社の傘下の本屋を合わせると約1千軒になり、書店経由の出版物売り上げの20%強を占めている。それだけの規模の本屋が、出版社から直仕入れをするようになるかもしれない。
――3社の書店の全ての仕入れが、新会社を通すことになるのでしょうか
それは出版社との交渉によりますね。今もすでに、タイトルごとに直仕入れをしているケースもある。増やしていくかもしれないし、出版社によっては全部直仕入れになるかもしれない。「返品率をこれだけ下げる」など、条件次第でビジネスは成り立つわけですから。
取次大手が下した「決断」
――新会社では、直仕入れを前提とする仕組みに日販が加わったことが注目されました。新会社の仕入れシステムでは、日販は従来の出版取次業ではなく、物流業に徹するのでしょうか
(出版社との条件交渉などの…