小田急のオルタナスクール、提案は運転士 「不登校の時間を学びに」

足立朋子
[PR]

 小田急電鉄東京都新宿区)が神奈川県藤沢市の善行駅西口に9月に開設する学校以外の学びの場「オルタナティブスクール」が8月29日、報道陣に公開された。

 不登校を経験した現役運転士2人が、好きな鉄道への興味が「その後の人生を変えた」と確信し、社内提案したのがきっかけだ。定員の7割が埋まり、クラウドファンディングには全国の288人から目標を上回る259万円の支援が集まったという。

 善行駅に直結する商業施設に5日開所するのは、同社初の試みである「AOi(アオイ)スクール」。路線図や鉄道会社の社史、地図や専門誌などの図書が棚に並ぶ環境の中で、カリキュラムは設けず、子どもの興味をもとに探求学習をしていく。

 例えば、電車のデザインに興味がある子どもがいれば、小田急で実際に車両設計をしている担当者に話を聞きながら、本物さながらのノウハウを学ぶことを楽しんでもらう。料金は、週1回3時間で月額8千円。

 中学、高校で不登校を経験した入社7年目の運転士、別所尭俊(たかとし)さん(27)と鷲田侑紀(ゆうき)さん(27)が提案した事業だ。学校に行けず、劣等感にさいなまれて外出もままならなくなったとき、子どものころから好きだった鉄道の存在が社会への関心をつなぎとめた。「鉄道に関わる仕事をしたい」という願いがその後の人生の希望にもなった。二人が社内で出会い、「鉄道をフックに、不登校の時間を学びのチャンスに変えられるのでは」と意気投合した。

 2人は1年ほどをかけ、不登校の当事者へのインタビューや支援団体との意見交換、子どもに参加してもらう実証実験を重ねて臨む。5月のスクール開設発表後、東京や神奈川、埼玉や茨城などの小中学生から応募があり、48人が通う予定だ。スタッフは2人のほか、社内公募に応じた20~60代までの4人が加わる。自身の子どもが不登校を経験した母親や、海老名駅の副駅長らがいるという。

 スクールのコンセプトは「I’m OK! You’re OK!」。自分の「好き」が尊重される経験を通じて自分を大切にし、やがてほかの人も大切に思えるようになる好循環が生まれる場にしたいという。

 別所さんは「簡単じゃない。でも僕たちが『好き』を起点に、自分の周りの世界が明るく見える経験をしたのは確か。まずはそれぞれの子どもたちがどんなときにワクワクするかを一緒に探していきたい」と話した。(足立朋子)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません