質問用紙に「人生がしんどい」 戸惑った飼育員、本気で書いた体験談

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若松真平

 4月19日、神戸市立王子動物園に質問箱が設置された。

 動物への疑問や飼育員の仕事内容などについて質問を募り、飼育員が答える企画のためだ。

 4月19日を「飼育の日」とする語呂合わせで、飼育員のHさんが提案した。

 質問と回答は、誰でも読めるようにファイルに入れて広場に置いてある。

 その中で、回答するかどうか迷った質問があった。

 質問者は「42歳男」となっていて、「最近人生がしんどいです」とだけ書かれていた。

 動物にも飼育員にも関係ない内容で、そもそも質問でもない。

 どうしようか迷っていた時にふと、「動物たちに助けられた」という来園者の言葉を思い出した。

 「私が人生に悩んでいるとき、この子(動物)たちに助けられたの。この子たちに会うことを目標に平日は頑張って、週末会いに来ているの」

 この人だけでなく、他の人からも同じような話を聞いたことがある。

 もしかしたら回答を書けるかもしれない。

 自分が動物たちと接していて感じることや、過去にいじめを受けていた時に母がかけてくれた言葉についても書けそうだ。

 人によって受け取り方が異なるから不安だけれど、自分の経験を素直に回答してみよう、と思った。

書いた答えは

 返事を書くスペースに文章が収まりきらず、欄外にまで書いてしまった。

 書き出しは「動物は好きですか?」という質問にして、以下のように続けた。

    ◇

 もし好きでしたら動物達に相…

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この記事を書いた人
若松真平
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くらし
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年9月10日17時50分 投稿
    【視点】

    ふれあい広場は、放し飼いにされている小動物と身近にふれあうことができる「動物とこどもの国」エリアにある。手づくりのものも多く、温かみを感じられる。誠実に柔らかく対応されたHさんの存在も含めて、やっぱり特別な場所だと思う。

    …続きを読む