100年前は当局も拡散 災害のたびに誤情報、心にとどめたい格言

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編集委員・北野隆一 宮野拓也

 1世紀前の関東大震災では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった根拠のない情報があふれ、実際に多くの朝鮮人らが殺害された。なぜ虐殺にまで至ったのか。今でも災害のたびに、自然と生じる流言だけでなく意図的なデマが拡散される。どう向き合えばいいのか。

 震災2年後の1925年に警視庁が刊行した「大正大震火災誌」などによると、当時の警察は震災発生直後の23年9月1日午後1~2時ごろには流言の発生を報告。東京では千住、江東地区や品川、大崎方面などを中心に、2日午後から3日明け方にかけてピークを迎えたとみられる。

 富士山の噴火など災害に関するものもあったが、朝鮮人に関する誤情報が圧倒的に多かった。「集団で暴動に来る」「放火した」「井戸に毒を入れた」などだ。朝鮮人や中国人に対する虐殺事件を調査し、当時の政府文書を精査した日本弁護士連合会による2003年の報告書で、いずれも事実ではなかったと明らかにされている。

 ただ、当局が誤った情報を拡散することもあった。内務省は発災の翌2日、「震災に乗じて暴行する朝鮮人が来るかもしれないから、各町村は在郷軍人や消防団と協力し、一朝有事の場合は適当の方策を」と関東近県に指示。各地で自警団の結成を促す結果となった。

デマからなぜ虐殺に

 現在の千葉県船橋市にあった…

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この記事を書いた人
北野隆一
編集委員
専門・関心分野
北朝鮮拉致問題、人権・差別、ハンセン病、水俣病、皇室、現代史
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    米重克洋
    (JX通信社 代表取締役)
    2023年8月31日12時27分 投稿
    【視点】

    デマやフェイクニュースを作るコストは格段に安くなった。一方で、それを検証するコストは飛躍的に高くなった。今の状況に対しては、そんな印象だ。 私が代表を務めるJX通信社でも、SNSなどから災害や事故などのリスク情報をAIで収集するFAS

    …続きを読む