「存在感が低下」日本のiPS細胞研究 治療法実現へ問われる真価

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野口憲太 瀬川茂子
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 日本で世界に先駆けてつくられたiPS細胞の研究開発の優位性が揺らいでいる。論文数や特許数は海外にリードを許していて、製薬企業が患者に試している段階の治療法の件数は、近年、海外の製薬企業の追い上げもある。iPS細胞研究に力点をおいてきた日本の真価が問われている。

 iPS細胞を実際の患者に試す研究は、2014年に日本の理化学研究所などが、世界で初めて目の病気で実施した。

 2022年度の特許庁の報告書によると、22年4月時点で企業が関わる開発段階の治療法の件数は、日本が7件に対し、米国10件、中国3件、豪州4件だった。

 日本は、iPS細胞からつくった細胞で失われた臓器の機能を回復させる「再生医療」の件数が多い。海外には日本よりも進んだ開発段階のものもあり、正式な承認を受ける「一番乗り」は、海外の方が早くなるかもしれない。

 一方、米国ではがん治療への応用に力点がある。今年に入って撤退があり、米国立保健研究所(NIH)のサイトで調べると8月時点で4件に減った。ただ、がんの治療法は分野全体の知見も多く、実用化への道筋は見えやすい。

 研究開発の基盤となるiPS細胞関連の論文数は、18~21年の推移をみると、日本は年100本ほどで横ばいだったのに対し、中国は約90件から200件近くまで増え、20年に日本を抜いて4位になった。21年は1位の米国、2位の欧州がそれぞれ300件超。報告書は「日本の研究開発における存在感が相対的に低下した」と指摘する。

 実用化に重要な関連の特許出願数(16~20年)の総数は米国、中国に次いで3位。ただし、「再生医療」のための特許に限ると、中国を上回り米国に次ぐ2位だった。

 日本では13年から「10年…

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