第1回子どものSOSはAIが救う? 心の天気、検索履歴…見える化の先は

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 「教育の効果は数字では測れない」と長く言われてきた。子どもの成長は、成績のように数値で表せるものだけでは測れないからだ。その中で重きを置かれてきたのが教師の「経験と勘」だった。そんな教育現場がいま、変わりつつある。

「自殺」「いじめ」…特定語の検索数も可視化

 全国に先駆け、2017年秋から小中学生一人一人にタブレット端末を配布した東京都渋谷区。昨秋、端末を通じて得られた情報などをグラフや表として可視化する「教育ダッシュボード」と呼ばれる仕組みを導入した。

 端末をどれぐらい使い、ウェブサイトで何にアクセスしたか。こうした履歴に加え、子どもたちが今の気持ちを「晴れ」「雨」などのマークで毎日記録する「心の天気」も表示される。

 SOSを早期に発見するため、「自殺」「いじめ」など特定のキーワードの検索数も可視化している。

 出欠や遅刻、早退、保健室の利用、学校生活アンケートや体力テスト、全国学力・学習状況調査の結果なども取り込まれている。取り込んだ情報はグラフや表にし、アンケート回答の推移を見ることもできるなど、子どもの興味や関心、悩みなどが一目でわかるようになっている。

見える化」の狙いは

 子どもたちの学習状況や友人関係などの把握は、これまでも教師が行ってきたことだ。それをダッシュボード上で「見える化」することに、どのような意味があるのか。人に知られたくない情報があった場合に、プライバシーを侵害する恐れはないのだろうか。

 取り組みの狙いについて、区…

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    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2023年9月3日7時48分 投稿
    【視点】

    【なぜ子どもばかり情報収集?】研究者として関わっていますが、子どものデータ利活用ばかりが先行し、教員や学級・学校に関するデータ利活用が活性化せず、大人優位の「子どもからの情報搾取」が先行しているように見えてしまうことを懸念しています。 ま

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2023年9月3日9時13分 投稿
    【視点】

    監視強化、ネガティブなレッテル貼り、データの妄信など、様々な問題が含まれている。 調査研究のために匿名化されて分析されるデータとは異なり、個人名と紐づけられ処遇に反映されるハイステイクスなデータ取得は、個人のその後の一生を左右しかねない重大

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連載データで子どもは「見える」のか 活用の最前線と課題(全9回)

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