処理水巡り「中国リスク」直撃 日本食ブームも業者「急ぎ手を引く」

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上海=井上亮 台北=石田耕一郎

 日本の水産物を扱ってきた業者が、政治の風向きでビジネスを失う「中国リスク」に直面している。東京電力福島第一原発の処理水放出を受け、日本食ブームに沸いていた中国は、24日から日本産水産物が全面禁輸となった。市場開拓をしてきた業者のため息は深い。

 「中国ビジネスはもはや計画の立てようがない」

 日本産水産物の禁輸発表に重なるように、23、24両日に上海で開かれた「国際漁業博覧会」。出展した日本の食品会社の担当者は嘆いた。中国向けにホタテやブリなどの輸出を手がけていたが、7月以降取りやめた。水産物に対する放射性物質の全量検査が始まり、通関が滞ったためだ。

 検査に2週間程度かかるようになり、鮮魚は鮮度が保てないので輸出をやめた。長持ちする冷凍は約1カ月で通るというが、時期や数量が読めないことを嫌がった取引先が前金での支払いを拒否し、取引がなくなった。これまでに数億円の損失が出ているという。

 担当者は「いつ輸出が正常化するかわからない以上、ほかで稼ぐしかない」。日本では海鮮スープなど加工品も販売しており、中国での展開も探るという。

 中国では、日本料理店やすし店などが相次いで開店し、日本食ブームに沸いていた。だが、日本産の水産物の輸入が全面禁止となり、ブームに水を差す可能性が高い。

 昨年も品目別で輸入額が467億円と最も多く中国で特に人気なのがホタテだ。日本の冷凍ホタテの卸業者は「中国SNSの検索ワードでは処理水がトップに入るほど注目されている」と身構える。放出前から数十店から取引をやめたいと言われていた。

 日本産を多く輸入してきた中国の業者は、今後は国産に切り替える予定だ。7月に輸入した日本産ウニは広東省深圳市の税関で11日間留め置かれ、「すべて廃棄せざるをえなくなった」と憤る。今後は国産魚の養殖に力を入れるという。

 「私も食っていかなきゃいけない。急いで日本からは手を引く」。担当者はこう話す。

日本食ブームに影

 別の日本の業者は、鹿児島産…

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この記事を書いた人
井上亮
中国総局|政治外交担当
専門・関心分野
中国社会、人口減少、移民
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