鳴りやまない電話 脅迫FAXで使われた弁護士「誰にも起こりうる」

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 東京音楽大学(東京都目黒区)に爆破予告ファクスを送ったとして男2人が威力業務妨害の疑いで逮捕された事件で、ファクスの文中で脅迫主として氏名を勝手に記された弁護士が24日、朝日新聞の取材に応じた。ファクスは多くの学校に送られ、脅迫犯と勘違いした大学などからの問い合わせがあり、対応に追われたことを明らかにした。

 第一東京弁護士会の唐澤貴洋弁護士(45)。こうした嫌がらせや誹謗(ひぼう)中傷を約10年間、受けているという。「厳しく対処し、被害はこれで最後にしたい」と語った。

 警視庁などによると、無職の大熊翔(26)=埼玉県草加市=と東京農工大大学院生の佐藤直(22)=東京都小金井市=の両容疑者は共謀し、東京音楽大に「爆弾を334個しかけた」と書かれたファクスを1月23日に送信した疑いで逮捕され、8月23日に起訴された。

住所、電話番号、口座番号を晒されて

 捜査1課によると、同様のファクスは、1月23日だけで延べ約1100件送られた可能性がある。似た内容のものも含めると5月までに延べ30万件を超えるという。

 2人は「恒心教(こうしんきょう)を広めたかった」などと供述しているという。「恒心教」は、特定の掲示板に唐澤弁護士ら特定の人々への嫌がらせを書き込む人たちの行動について2012年ごろから使われる言葉。宗教性はない。

 捜査関係者によると、1月23日の脅迫文には送り主として、実在する唐澤さんの事務所の住所・電話番号、脅して要求した現金の振込先として唐澤さん名義の銀行口座番号が書かれていた。手書きのような唐澤さんの氏名と印影もあった。

 唐澤さんによると、同23日以降、事務所は、苦情の電話が鳴りやまなくなったという。「なんでこんなファクスが送られてくるんだ」「あなたが何とかしないといけないんじゃないですか」

 事務員が電話を切ると、また次の電話がかかってくる状態だった。ファクスを受信した学校などから数カ月間、断続的に多い時で一日100件以上の電話がかかってきたという。第一東京弁護士会側に苦情の電話をかける人もいた。

 脅迫文の口座に現金を振り込んでしまった人も数人いた。唐澤さんは口座を閉鎖し、振り込んだ人に返金する作業にも追われた。弁護士業務は手につかず、精神的に追い詰められ、朝起きられなくなったという。

「今止めないと誰かがまた被害に遭うかもしれない」

 第一東京弁護士会は7月6日…

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