AIの本質、冷静に理解を 一神教の発想が背景 西垣通さんに聞く

有料記事AIと私たち

聞き手・池田伸壹
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 AI(人工知能)について耳にしない日がないほどブームが過熱している。そんな騒がしさを冷静に見ているのが、半世紀にわたってコンピューターに携わり、1980年代の第2次AIブームを技術者として体験した情報学者の西垣通さんだ。人知を超えるAIは誕生するのか。私たちはどうAIとつきあえばよいのかを聞いた。

 ――AIが爆発的に能力を高めて、人間の知性を超える「シンギュラリティー」を迎える日は来るでしょうか。

 「それが2045年に実現するとか、もっと早く訪れるといった議論が世界中で盛んですが、少し冷静になりましょう。機械が人間のような知性を持つでしょうか。そういう日は来ないし、人間と同様のことができる汎用(はんよう)AIも出現しないと私は思っています。いま開発され、期待されているChatGPTチャットGPT)のような対話型の生成AI技術は重要ですし、使いようによっては人類の役に立つ。ただし、人間の知性の代わりには決してなりません。そうしたAIの本質を理解しないまま、ただただ『乗り遅れるな』と活用にのめり込む日本の風潮が心配です」

 ――これまで、人類とAIはどのように歩んできたのでしょう。

3度目のブーム

 「そもそも、10年代から続くAIブームと呼べる状況は、1950~60年代の第1次ブーム、80年代の第2次ブームに続く3度目のことです。第1次ブームの中心は、機械的な自動推論によって正解を導き出すことでしたが、応用先はせいぜいゲームやパズル程度でした」

 「第2次ブームでは実際に役に立つよう、法律家や医師といった専門家の代わりに現実的推論をしようとさまざまな『エキスパートシステム』が開発されましたが、あまり利用されなかった。そして現在のブームは、これまでとは大きく違っています。『正しさ』よりも、大量のデータを統計処理し『確率の高い解』を求めることに重点が置かれているのです」

 ――「正しいこと」が最優先ではないのですか。

 「ええ。長い間、AIは正し…

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