中国経済が迎えた「重大な時期」 日本の経験から占う恒大問題の行方
経営危機に陥っていた中国の不動産大手・恒大集団が、米国の連邦破産法15条の適用を申請しました。膨大な負債を抱えながら長引いてきた恒大の問題は今後、なにをもたらすのか。ささやかれる「中国のバブル崩壊」は現実のものとなるのか。中国マクロ経済が専門で、かつて日本銀行北京事務所長も務めた福本智之・大阪経済大教授に聞きました。
――恒大による破産法15条の申請にはどのような意味があるのでしょうか?
「中国の国内では、恒大集団が発行していた債券や銀行貸し出しは期限が到来しても、政府の指示で期限を猶予している。そうして時間を稼いで処理を目指している。一方、香港市場で発行した米ドル債や米国での債務もごく一部ある。中には、恒大集団からの提案に応じない債権者もいる。破産法の15条を申請することで資産の差し押さえなどを止め、債務の再編交渉を進めていくためにやったのだろう。これによっていきなりサドンデス(突然死)となったり清算したりするようなものではない」
「今までの経緯の中で恒大のドル建て債券の価値はジャンク(くず)に近いと認識されており、今回のことで大きな影響があるわけではない。中国政府が介入してやっているような中国国内での資産の処理は今まで通りに続くだろう」
――恒大全体の債務は日本円で50兆円規模。この膨大な債務の行方はどうなるのでしょうか。
「これはかなり大変だ。今は各地方政府も介入させる形で、どちらかというと自己責任だという形で各地にある資産の処理を進めさせようとしている。ただ、実際上はもう債務超過だと思われ、恒大集団が自力だけで経営を再建するのはなかなか難しい」
「そこで債務の再編をしたり、他の会社に買ってもらって業界再編をしたりということになるだろうが、規模が大きく、いろんな都市に資産もばらけているので時間がかかってしまっている。時間がかかればかかるほど、資産が劣化していく。非常に遅いなあとは思う」
1社にとどまらない問題
――問題は世界経済のリスクだとまで言われます。
「恒大集団だけで見ると、総…
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- 【視点】
日銀北京事務所長でもあった福本智之氏が、中国の特殊性と日本との共通性を切り分けて分析した落ち着いた意見だと感じました。中国経済を長くウォッチしてきた知人たちも似た見方をしていました。 中国は土地を国家が所有しているし、財政出動を含めて打て
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