ハラスメント被害1325件、6割は窓口相談せず 防衛省が調査公表

田嶋慶彦
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 防衛省は18日、防衛省・自衛隊でのハラスメントに関する「特別防衛監察」の結果を公表した。全組織対象の調査に対するハラスメント被害の申し出は1325件にのぼり、このうちの6割超のケースで専用窓口に相談していなかった。

 特別防衛監察は、元陸上自衛官の五ノ井里奈さんが同僚からの性暴力を告発したことを受け、浜田靖一防衛相が昨年9月に指示。元検事がトップを務める防衛監察本部が独立した立場から調査した。被害の申し出1325件には複数の種類のハラスメントが含まれるケースもあり、内訳はパワハラが1115件、セクハラが179件、妊娠や出産、育児を理由にしたマタハラなどが56件だった。

 申し出全体の64・2%にあたる850件では、専用の相談員や窓口に相談がされていなかった。理由は「改善が期待できない」が23・0%で最も多く、「相談員・窓口があることに思いが至らなかった」(15・9%)、「相談できる雰囲気・環境ではない」(12・7%)、「不利益や加害者からの報復を懸念」(10・7%)と続いた。相談した場合でも「お前も職場にいられなくなる」「自衛隊はそういうところ」などと言われたとの訴えが多数あったという。

 こうした結果を受けて、防衛監察本部は「相談制度が本来の役割を果たしているか懸念される」と指摘。組織全体や管理者のハラスメントに対する意識改革や、管理者が適切に対処しなかった場合にはマイナスに評価することを明確に打ち出す必要があるとした。

 防衛省は、申し出のあった被害のうち「部下の隊員を指導する際に蹴った」「女性の部下隊員に不適切な発言をした」など8件について、すでに懲戒処分を出している。今後さらに懲戒処分が必要と判断された場合は、適切かつ迅速に対処するとしている。

 また、同省が設置した「ハラスメント防止対策有識者会議」も同日、対策の抜本的な見直しに向けた提言をまとめた。ハラスメントのリスクが高い管理職向けの教育を重点的に実施するほか、被害の申し出に伴う不利益は一切ないと明確に示すことなどを求めた。(田嶋慶彦)

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