第10回「ロンドンは自分の国と感じない」 オーウェルも見た南北格差の今
広場からスケボーの音が聞こえてきた。
普段はなかなか立ち寄れないが、今回の取材は、日々のニュースに追われている時には話す機会がないような場所で声を聴くことが狙いだ。彼らに声を掛けてみた。
イングランド北部の都市マンチェスター。日曜日だからだろうか、社会人が多かった。
滑り始めて5年というウィル(28)が地べたに寝転んだまま話し始めた。飲食店で「シェフのような仕事」をしているという。
近くの「なんでもない村」(nowhere village)から出てきた、と言うので、どんな村かと尋ねると、こう答えた。
「人口は200人。18歳になって最初に出会った女の子と結婚するような集落。バスは1日に数本だけ。買い物したければ朝のバスで隣町に出るしかない。たばこ、それにチョコとソーダを5ポンド(900円)ぐらいで買って戻れば、もう午後で、一日の半分が終わる。だから若者は外に出る。オレもそんな一人だよ」
ひととおり話した後、「で、キミはどこから来たの?」と聞いてきた。私が日本出身でロンドンを拠点に記者をやっていると自己紹介すると、ウィルが同情するかのような口調に変わった。「え、ロンドンかよ? 物価が高くてイヤにならない?」
国内の地域格差が深刻なイギリス。世界から人材(ヒト)と投資(カネ)が集まるグローバル都市ロンドンを、地方の人々はどう眺めているのか。記事後半では、物価の高いロンドンから「押し出された」という若者や元トラック運転手の声を伝えます。
■ロンドンから「押し出された…
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- 【視点】
これまで忙しさにかまけてコメント出来なかったが、この金成記者のシリーズは本当に素晴らしい。かつて『トランプ王国』の特集で、日本から見るアメリカは東西両海岸ばかりしか見ていなかったことを教えられたが、この連載は、イギリスをロンドンを中心とする
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