平井恵美
拡大するスポットワークを募集するアプリをのぞくと、保育士の求人がいくつも表示される
空き時間に単発で働けるスポットワーク(スキマバイト)が、保育所など子どもを預かる現場に広がっている。深刻な人手不足に悩む施設側にとっては働ける人がすぐに見つかるとあって便利な一方、面接や履歴書なしに採用された保育士らが頻繁に入れ替わる状況に保護者や専門家から懸念の声があがる。こども家庭庁も保育所などでの継続的な利用に注意を促す通知を出した。(平井恵美)
「申し込んですぐに働けるのは助かります。どんな職場なのか実際に働いてみて、確かめられるのもいいところでした」
東京都の女性(39)は今年2月、放課後に小学生らを預かる放課後児童クラブ(学童保育)に就職が決まるまで、スポットワークのアプリ「タイミー」を利用して保育施設や児童発達支援事業所、飲食店などで働いていた。
コロナ禍で仕事がなくなったのをきっかけに、独学で保育士の資格を取得。都内の企業主導型保育所でパートとして働きながら、アプリを使い始めた。多い時で月に5~10回、時給1100円~1300円ほどで仕事を引き受けた。
タイミーは事前に基本情報や本人確認書類などを登録すれば、希望の仕事に申し込め、先着順にマッチングされる。原則、面接や履歴書なしにすぐに働け、給料は即日入る。
女性によると、保育士証については確認されたが、面接や研修はなかった。中には履歴書を求める施設もあった。指示が明確で安心して働けることもあれば、戸惑うこともあったという。
「子どもと2人きりになってはいけないはずなのに、園児のトイレへの付き添いを頼まれた。心配だったので後で園長に報告しました」。
タイミーによると、保育施設の募集人数は2024年2~7月の月間平均で前年同期平均の約2倍に拡大している。同社のアプリ上には、保育所や幼稚園、学童保育、障害のある子どもらを預かる放課後等デイサービス、英語の環境で未就学児を預かるプリスクールなど子どもを預かる施設での求人が多く掲載され、有資格者の募集が目立つが、一部には「無資格OK」とする求人もある。
拡大するスポットワークの仕組み
求人事業者にとっては人手が必要なときにすぐに人材を確保でき、良い人材だった場合は長期雇用にもつなげられる。ある事業者は「清掃や(壁面装飾などの)製作といった補助業務を中心に任せており、既存保育士の負担軽減にもつながっている」と言う。
また人手不足が深刻な自治体では、介護や保育分野の人材確保に向けてアプリ事業者と連携協定を結んでいるところもあり、福岡県宗像市の担当者は「保育や介護の事業者向けにこれまでスポットワーク活用のための説明会も開いてきた」と話す。
新しい働き方として注目される…