第4回戦犯だった父、殴られ続けた母、そして自分も…演劇で向き合う「業」

[PR]

 「呪われた家族だから、自分の血を絶やしたい」。演出家で俳優の渡辺義治(よしじ)さん(75)は、だから子どももつくらなかった。

 幼いころ、父はたびたび夜中にうなされ、突然うめき声を上げて跳び起きた。

 脂汗を流し、ランランと目を光らせた父は、恐怖に引きつった鬼の形相だった。

 川の字になって、近くで寝ていた渡辺さんの心は凍りついた。恐れとおびえ、どうしようもない不安に襲われた。

 渡辺さんの父、愛治さんは1910年、岐阜県の地主の次男として生まれた。

 大学卒業後に役場に勤めたが、一旗揚げようと、34年に志願して旧満州国の軍人になった。

【連載】戦争トラウマ 連鎖する心の傷

悪夢、酒浸り、家族への暴力――。過酷な戦争体験からトラウマを抱え、後遺症に悩む旧日本兵たちの存在は置き去りにされてきました。ようやく語れるようになった子や孫の証言から、連鎖する心の傷の問題を考えます。

 満州国は31年に満州事変を…

この記事は有料記事です。残り2834文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2023年8月15日13時41分 投稿
    【視点】

    「加害の歴史を直視する」とはどういうことか。なぜ必要なのか。本記事はじめ連載「戦争トラウマ 連鎖する心の傷」は、この重い問いを改めて考えさせてくれる。戦時中に行われた加害や蛮行を見つめ、反省することはもちろん必要だが、そこで終わるのではなく

    …続きを読む

連載戦争トラウマ 連鎖する心の傷(全17回)

この連載の一覧を見る