第26回ニュース対価支払い法制化「非常に成功」 元オーストラリア政府高官
豪州で2021年、報道機関とIT大手との関係に大きな影響を与える法律が成立しました。IT大手と報道機関との「ニュース配信」をめぐる取引ルールを定めたもので、交渉がまとまらない場合には独立機関による仲裁を義務づける内容です。背景にあるのは、IT大手側が独占的で強い交渉力を持っているために報道機関に払われる対価が不当に安くなっているという問題意識です。法制化までには、グーグルが豪州から出ていくことをちらつかせたり、フェイスブックの運営企業(現・メタ)がニュースの表示を止めたりする事態も起きました。
法律ができて2年余り。その効果をどう見るのか、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)の元委員長として法制化に深く関わったオーストラリア国立大のロドニー・シムズ教授に聞きました。
――法施行後、仲裁に発展した事例はありません。
この法律の目的は、報道機関とIT大手との間で、交渉力の不均衡がないよう取引できる状況を作り出すことでした。政府は報道機関が公正に交渉できる限り、多くの規則を設けるつもりはなかったのです。
法制化に前後して、IT大手側は報道機関と(対価の支払いについての)契約を進めました。これまでにグーグルは認定された報道機関のすべてと、フェイスブックは85~90%の企業と契約しています。
各メディア企業への聞き取り…
- 【視点】
プラットフォーム(PF)と報道機関との関係を規律する立法について、制定の際の議論が紹介されることは増えてきましたが、その効果について立ち入って触れる記事は貴重です。内容的にも、重要な論点が網羅されていると感じます。 この種の規制への消極
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