テーマパーク界で「米一強崩す」 USJ再建の森岡毅氏が描く世界
WBC決勝・米国代表戦の直前、大谷翔平選手は「あこがれるのはやめましょう」と奮い立たせ、世界一になった。
野球同様、米国が頂点に立つテーマパークの世界で、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)を立て直した、マーケティング会社「刀」の森岡毅代表は「戦い次第で、日本は米国に勝てる」とまで言う。
そんな男が描くテーマパークの未来とはどんな世界か。
「実体験こそ輝く」 USJ再建で得た確信
「テーマパーク界は米国の一強。ディズニーもユニバーサルも、米国で生まれた。でもね、日本がマーケティング力で上回り、日本が誇る多くのコンテンツを活(い)かせば、その二つにも対抗できる世界第三勢力をつくれると思うんですよ」
テーマパークに関わるようになったのは2010年6月。外資系企業のマーケティングを担当していた頃、大阪市のUSJの運営会社の社長グレン・ガンペル氏から声がかかった。
USJは、開業1年目の01年度は1100万人の来園者だったが、右肩下がりに減り続け、当時は700万人台にまで落ち込んでいた。
USJだけではない。業界全体としても、不安の波が覆いかぶさっていた。
デジタルが進化し、AR(拡張現実)の技術が登場。また、VRゴーグルをかければ、違う場所に立ったような体験もできる。「誰もテーマパークに行かなくなるのではないか」と危惧する声もあった。
「みんなびびっていましたよ。でもね、私はますますエンターテインメントの実体験が輝くと思ったんです」
例えば、本で読んでレモンが酸っぱいという知識を持っていたとしても、酸っぱいという本当の意味は経験しないと理解できないように、デジタルによって知識は得られても「経験をしなければ、人間は理解したり、ましてや感動したり、本当の喜びを味わったりはできない」。テーマパークは、安全にさまざまな経験ができる稀有(けう)な場所だという。
「デジタル上でエンターテインメントを覚えた人は、生の刺激が絶対に欲しくなる。デジタル上でドラゴンと戦った人は、実際に剣を振りたくなる。それは100万年後も変わらない」
「ライブならではの体験」を生み出す進化
ただ、デジタル技術で手軽に異世界に入ることができるようになれば、実体験ではさらなる没入感を求められる。だからこそ「テーマパークも新しい進化をしていかなければいけない」。
USJの「ハリー・ポッター」エリアはそんな没入感にこだわった。
エリアに入った瞬間に、そこはハリー・ポッターの世界だ。映画そのままの魔法学校とホグズミード村を目の当たりにできる。アトラクションに進めば、実際にほうきで飛んでいるかのような風を感じる。「ライブならではの体験」で、来場者はV字回復し、6年間で倍となった。
USJ退社後はマーケティング会社を立ち上げ、各地のテーマパークの再建にたずさわる。
埼玉県所沢市の「西武園ゆうえんち」では、昔ながらの昭和の遊園地を生まれ変わらせた。
売りの一つが、ゴジラのアトラクションだ。息つく暇もなく、ゴジラやキングギドラが次から次へと襲いかかってくる。既存の施設で昭和を体感しながら、デジタル映像との融合で、2匹の足元にいるかのように感じる。
「この映像技術と重力感覚を刺激するアトラクションはどこの国にも負けていない」
テーマパークが日本を変える
日本のテーマパークの未来をどのように描いているのか。
日本でテーマパークを作るだけではなく、森岡さんはその先も見据えています。大谷翔平選手を例に挙げ、目指していく方向、未来を語ります。
「テーマパークの価値は、人…
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- 【視点】
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