福山型先天性筋ジストロフィーと診断された加藤真心(まこ)さん(13)は1歳のとき、地元の保育園に入った。
その頃から、母さくらさん(42)は考えていた。
「真心を救えるなら、できることは何でもしたい」
強い体の基本は食から。食事を変えることで免疫力を保ち、元気になれる。病気も治せるのではないか――。
「真心が病気になったのは、自分が食べたものが原因」。封印していた自責の念が、再び頭をもたげるようになった。
通信講座で栄養学やマクロビオティックなどを学び、雑穀やグルテンフリー、ビーガンと体に良さそうな食生活を試みた。
調味料はできるだけ手作りのものに。野菜はなるべく無農薬のもの、肉は「グラスフェッド」と呼ばれる牧草を食べて育った牛肉を選んだ。
食べ物を良い物、悪い物にわけ、白米や添加物が入っていそうな食べ物は避ける日々。真心さんは、静かに食べていた。
家族の誰かが食事を残すと、さくらさんは許せなかった。「なんで食べないの? 体に良いのに」。食卓での家族の表情は暗く、いつしか誰も「おいしい」と言わなくなった。
ある日、父悠太さん(45)が言った。
「神経質になりすぎだよ」
大げんかになった。でも夫婦…
- 【視点】
真心さんの病気がわかり、自身の人生について「終わった」とすら感じた、母のさくらさんですが、その後、「障害がある子が生まれても、誰も絶望しない世の中にする!」と精力的に活動を始めます。 後編で紹介する「スナック都ろ美(とろみ)」もその一つ
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