元女子世界王者、男子プロテスト受験は認められず 時期尚早と判断

塩谷耕吾
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 プロボクシングの元女子世界王者の真道ゴー選手(36)が性別適合手術後に男子のプロテスト受験を希望していた問題で、日本ボクシングコミッション(JBC)は19日に東京都内で理事会を開き、プロテストは認めないことを決めた。JBCは「安全管理の面から容認には踏み込めなかった」とした。

 真道選手は心と体の性が一致しない性同一性障害に悩み、2017年に手術を受けて戸籍の性別も男性に変更していた。JBCは昨春から諮問委員会などでこの問題を話し合ってきた。

 JBCはこの日、出生時に割り当てられた性別が女性で、男性としての性自認を対外的に宣言している人を「トランス男子」と定義し、「トランス男子ルール」を策定した。一定の運動能力が認められ、健康診断をクリアした場合は特別ライセンスを発行され、男子選手と試合形式のスパーリングを行うことができる。この内容によって、プロテストを認める可能性もあるという。塩谷耕吾

視点

 この問題を議論してきた諮問委員会は、ジェンダー問題の研究家や、弁護士、医師らで構成され、「プロテスト受験を認めることは可能」と答申したという。

 同委は真道選手に握力や垂直跳び、パンチ力などの体力測定を課し、運動能力はプロの男子選手と遜色ないと判断したという。

 そんな答申を覆してまで、日本ボクシングコミッション(JBC)が見送りを決めたのは、「ボクシングは頭部に打撃を与え、脳振盪(しんとう)を起こさせる競技だから」とJBCの安河内剛・本部事務局長。コンタクトスポーツの中でも危険度が高く、今でも世界のリングで時折、リング禍が起きている。

 あるコミッションドクターは、「骨格の男女間の違いは、人種間の違いよりも顕著だ。頭蓋骨(ずがいこつ)は女性の方がきゃしゃにできている。同じリングに上げるのは慎重になる」と話す。

 JBCによると、米カリフォルニア州のように血中男性ホルモン濃度を目安に、トランス男子が男子のリングに上がっている例はある。だが、安河内事務局長は「安全を担保できるだけのデータの蓄積がない。時期尚早と判断した」。

 JBCは真道選手に準公式試合出場への道を開いた。準公式戦はレフェリーストップのタイミングが早かったり、1ラウンド(3分)の時間の短縮が可能だったりと、公式戦より安全度は高いが、ヘッドギアは不要だ。

 安河内事務局長は「今回は見送ったが、問題にフタをしたわけじゃない。半歩か、一歩、前に進んだのではないか」と語った。塩谷耕吾

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