アオウミガメ30匹の刺傷から1年 藻場の被害が続く沖縄・久米島

沖縄タイムス
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 沖縄県久米島町真謝の海岸で刺傷したアオウミガメ30匹前後が見つかった事件から1年。再発防止策が求められる中、漁師の間には同海域に網を仕掛けない「暗黙の了解」が生まれ、再発は考えづらい状況という。一方、世界的に増加傾向にあるアオウミガメが食べる町内の藻場は「危機的な状況」と専門家は指摘する。魚を育む藻場や漁業者の生活を守りつつ、いかにウミガメを保護するか。模索が続く。

 瀕死(ひんし)や死んだ状態のアオウミガメは昨年7月14日に見つかった。漁協などの調査に、町内の漁師は「大量に網に絡まり、仕方なく駆除した」と話したという。

 再発防止策を検討する町と漁協は昨年度、生息状況を調べるドローン調査を3回実施。目撃情報の多い真謝海岸や儀間漁港、宇根の久米島漁協車エビ養殖場周辺で「結構多い」(町職員)との印象を抱いた。

 アオウミガメは藻場があると移動せずにとどまる傾向があり、そこへ海流に乗って新たな子ガメが加わることで増えたとみられる。

「暗黙の了解」

 一方、漁協ではカメが逃げられる網の導入も考えたが、魚を逃すことにもつながるため「現実的ではない」(田端裕二組合長)。アオウミガメを傷つけた漁師は、現場付近では網を仕掛けないと話しているほか、カメの多い海域では漁をしない「暗黙の了解」も漁師間にあるという。網にカメが大量に絡まった場合に外すための連絡体制もつくられている。

 絶滅危惧種のアオウミガメだが、世界的には増加傾向にある。国立研究開発法人「水産研究・教育機構水産技術研究所八重山庁舎」の奥山隼一主任研究員は6月、真謝海岸や奥武島の藻場を潜水して確認。「ほとんど海藻が生えていない。予想以上に危機的な状況」と驚いた。

 海藻を食べる魚がほとんど見られないことから、アオウミガメの食べ過ぎによる「食害」が原因と推測する。藻場がなくなると魚も少なくなるため、漁業者への影響も大きい。

食材化を提案

 昨年の事件発生以前からアオウミガメを「害獣」とする見方が久米島の漁業者にはあり、頭数コントロールのためにカメの食材化を提案する研究者もいる。食用への転用について奥山さんは「一つの手段。何匹捕獲すれば藻場が回復するか、という科学的な裏付けが必要だ」と指摘する。

 父親が漁師で、久米島漁協監事を務めた経験もある真栄平建正町議は「藻場の状態を指標にして、頭数コントロールの対策を講じられないか」と提案する。

 町は9~10月、対策を議論する協議会を開催したい考えだ。(1)カメにタグを付けた頭数把握(2)岩礁を鉄柵などで囲っての藻場回復実験(3)採捕による頭数コントロールとその後の商品化-などを話し合う予定だ。

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