トランスジェンダーへの「素朴な疑問」 背景にある権力の勾配
「トイレはどうしているのか」「性器はどうなっているのか」――。出生時に割り当てられた性別に違和を覚えるトランスジェンダーの人たちに、そうでない人たちから「素朴な疑問」がしばしば向けられます。マイノリティーが安心して過ごせるスペースを運営するトランスジェンダー女性の奥田圭さんは、5年前の出来事をきっかけに、ネットで投げかけられる疑問に答えることをやめました。何があったのか、話を聞きました。
「素朴」装う揚げ足取りや攻撃も
――トランスジェンダーをめぐる「素朴な疑問」に、どのように対応してきたのでしょうか。
「5年前、お茶の水女子大がトランスジェンダー女性を受け入れると明らかにした時のことです。作家の百田尚樹さんが『よーし、今から受験勉強に挑戦して、入学を目指すぞ!』とツイッターに投稿しました。その後トランスの人へのヘイトがツイッターで一気に広がりました。それでも当初は、『トランスジェンダーって何?』といった根本的な疑問が多く、私も一当事者として丁寧に答えていました。他の当事者や、性的マイノリティーを支援している人たちも同じでした」
「ところが、だんだんと『素朴な疑問』の質が変わっていきました。揶揄(やゆ)するような文脈のもの、そして明らかに攻撃目的のものが増えていったのです。揚げ足取りのような疑問に答えてもムダだと思い、その後、ネットでは一切の疑問に答えることをやめました」
――答えても意味がない、と思ったのですね。
「ただし、ネットでは、です…
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- 【視点】
「『ジェンダー』って聞いたことがありますか、というと『トランスジェンダー』のことですよね、と学生がいうんです」。 職場で同僚から聞いた話ですが、ジェンダーに関するワークショップを学校で開催した際に、参加者から言われたのだそうです。聞くと、
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