ワインの誕生に迫る ブドウ果肉までの酵母の道のり 京都大が謎解き
古くから世界中で楽しまれてきたワインは、ブドウの果肉に含まれる糖分をアルコールに発酵させてつくる。発酵のかぎを握る酵母の働きがわかったのはここ200年ほど。はるかに歴史深いワインがどのようにして誕生したかは不明な点が多く、京都大の橋本渉教授らの研究チームがその一端を解き明かそうと実験を試みた。
いまのワインづくりは、前もって準備した酵母をブドウ果汁に加えアルコール発酵させるが、微生物である酵母の存在が知られていなかった昔は「自然任せ」だったと考えられている。
チームがまず注目したのが、ブドウを乾燥させてつくるレーズン。レーズンも酵母によって発酵しており、水を加えて数日おいた液は、伝統的なパンづくりにも利用されてきた。
市販のレーズンを水に2週間つけた後、液に含まれる微生物の集まりの遺伝情報を調べたところ、ワインと同じアルコール発酵能力が高い酵母が増殖しているのが高い頻度で見つかった。
一方、無菌空間でブドウを乾燥させてもこの酵母は見つからなかった。酵母はブドウそのものには付着しておらず、虫や鳥など外部からブドウの皮に付着したのがきっかけとなり、ワインやレーズンがつくられるようになったと研究チームは考えた。
だが、外部からもたらされた酵母がブドウの果肉にたどりつくには、かたい細胞壁や脂質成分でできたブドウの皮を打ち破らなければならない。
そこで、酵母とブドウの皮にすみつく常在菌にそれぞれ、皮の脂質成分を加える実験をした。
すると、酵母はこの成分を分解することができなかったが、常在菌はこの成分を分解してエネルギー源として利用していることが確認された。
表面に傷がないブドウの実に、酵母だけを加えてもなかなか発酵しなかったが、常在菌と一緒に加えると発酵が一気に進んだ。
これらの実験結果からチームは、外部から皮までたどりついた酵母を、皮にすみつく常在菌が果肉まで届くように手助けをしていると結論づけた。
チームのメンバーで、京大か…