第4回アヘン大国だった日本 「救済」信じ人生なげうった父、断罪した息子

有料記事偽りの帝国 満州アヘンマネーを追う

編集委員・永井靖二
【動画】人気漫画「満州アヘンスクワッド」(講談社)と歴史写真のカラー化で近現代史のタブーに迫る

アヘンの原料となるケシの栽培指導のため、満州国を訪れた日本の農家がいました。最終回では「大阪のアヘン王」と呼ばれた男性の人生と、その息子の苦悩を描きます。

 戦時下の旧満州国を舞台にした人気漫画「満州アヘンスクワッド」は、日本人の少年が家族を救うため、アヘンの密造に手を染める姿を描く。

満州アヘンスクワッド

 週刊ヤングマガジン(講談社)で連載中の漫画作品。2023年6月に単行本13巻が発売。単行本の累計発行部数は180万部を超える。

 ケシの実から、少年は高純度の「真(しん)阿片(アヘン)」を作り出す。その効き目が語られる場面で、こんなセリフがある。

 「あの『三島種』をも凌(しの)ぐモルヒネ含有量が確認されました」

 「真阿片」はフィクションだが、「三島種」は実在のケシの品種だ。

 「三島」とは、大阪府北部の三島郡のこと。この地で、生み出された品種が「三島種」だ。

 戦前、日本は、世界で十指に入るアヘンの生産国だった。商都・大阪の郊外は、明治末から昭和初期にかけてアヘンの一大産地だった。

 5月初旬になると、ケシの白い花で平野は雪原のようになった。

 それから100年以上を経て、「三島種」を生んだケシ畑は、宅地や田畑に姿を変えていた。

 「ムラをもっと裕福にしたいというのが、出発点やったと思います」

 河端武雄さん(83)は、そう話した。

 「三島種」を作り出し、「大阪のアヘン王」と呼ばれた二反長音蔵(にたんちょう・おとぞう、1875~1950)の長兄の孫だ。

 音蔵は大阪府三島郡福井村(現・茨木市)に生まれ、生涯をケシの栽培に捧げた。貧しい農村の活路を模索し、高値で売れるケシに着目した。

 「まぁ、『変人』ですわ」と、生前の音蔵を知る河端さんは明かす。

 小学生の頃、「世界は広い…

この記事は有料記事です。残り2319文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

満州 アヘンでできた“理想郷”

満州 アヘンでできた“理想郷”

漫画「満州アヘンスクワッド」とのコラボ特集。[もっと見る]