医薬品のアクセス向上へ 国際機関代表が協力要請 コロナで格差露呈
製薬企業とライセンス契約を結び、低中所得国で医薬品の開発と供給を進める国際機関「医薬品特許プール(MPP)」(本部・スイス)のチャールズ・ゴア代表が6月26日、東京都内で会見した。「医薬品へのアクセスはきわめて重大な問題」と訴え、日本の製薬企業に対し、知的財産権の使用に関する協力を求めた。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)では、ワクチンや治療薬へのアクセスをめぐり、経済的に豊かな国と低中所得国の格差が露呈した。
5月に広島で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、「G7広島首脳コミュニケ(声明)」で、感染症に対応した医薬品への公平なアクセス強化に「コミット(関与)する」とした。
塩野義製薬(大阪市)は昨年10月、日本企業として初めてMPPとライセンス契約を結んでいた。
契約に基づき、MPPと塩野義はこの日、海外のジェネリック医薬品メーカー7社に、新型コロナの飲み薬「ゾコーバ(一般名・エンシトレルビル)」のライセンスを付与したと発表した。これにより、低中所得の117カ国にゾコーバを供給できるようになる。
MPPは、がんや糖尿病、母子保健にも力を入れている。ライセンス契約について、ゴア氏は「市場の開拓や、(環境・社会・ガバナンスを考慮した)ESG投資につながり、経済的なメリットも大きい」と強調。「日本の他の企業とも連携したい」と意欲を示した。