中国系研究者の「米国離れ」加速、スパイ対策の「意図しない結果」

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プリンストン=合田禄 取材協力=エイダン・リリーエンフェルド
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 米国で研究する中国系の科学者が中国へ戻る傾向が強まっている――。そんな分析を米プリンストン大学の研究者がまとめ、米科学アカデミー紀要(PNAS)で27日、発表した。トランプ前政権下で始まった「経済スパイ対策」が裏目に出て、成果を上げていた研究者の「米国離れ」を招いたとみられている。

 プリンストン大学社会学部のユー・シェー(謝宇)教授らのチームが、世界中の科学誌に2021年までに発表された2億本以上の論文の著者とその所属先を分析した。

 名字などから中国籍や中国にルーツのある中国系研究者を特定し、00~21年の間に所属先をどのように変えたか調べたところ、米国から中国に研究拠点を移した研究者は、00年以降、増え続ける傾向にあった。

 25本以上の論文を執筆している研究者について分野別に解析すると、21年に米国から中国に移った人は、00~10年に比べて「数学と物理学」や「生命科学」では約4倍、「工学とコンピューター科学」は約7倍となり前年から急増していた。

背景にチャイナイニシアチブ

 背景とみられるのは、司法省が18年に始めた、中国政府による知的財産の盗用を重点的に取り締まる「チャイナイニシアチブ」だ。

 中国系の研究者が、米国の研究機関での成果やノウハウを中国本土に違法に持ち帰ることを懸念した施策で、有名大学の研究者らが中国との関係や資金の受け取りを開示していなかったとして司法省に訴追された。

 しかし、スパイと認定された…

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この記事を書いた人
合田禄
アメリカ総局|科学・米国政治担当
専門・関心分野
科学、医療、気候変動、宇宙開発