ノーベル賞技術で病気を治す ゲノム編集、海外では臨床研究も

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瀬川茂子

 これまで治療がむずかしかった病気が治るかもしれない――。狙った遺伝子を改変する「ゲノム編集」を使った治療法の開発が世界で進んでいる。海外におくれをとった日本でも取り組みが始まるが、海外勢が押さえる特許という壁を乗り越えようと工夫を凝らす。

 ゲノム編集の医療応用は、海外勢が先行する。火付け役となったのは、「CRISPR(クリスパー)/Cas(キャス)9」という技術だ。2012年に発表され、開発した米仏の研究者は20年のノーベル化学賞に選ばれた。これまでの「遺伝子治療」は、異常な遺伝子は残したまま、正常な遺伝子を入れるが、どこに入るかわからなかった。クリスパー・キャス9をはじめとする「ゲノム編集」は酵素を「はさみ役」として使い、狙った場所で遺伝子を破壊したり、挿入したりできる。

 3月に英国ロンドンで開かれた「ヒトゲノム編集国際サミット」では、ゲノム編集で治療を受けた女性が登壇した。遺伝子に変異があるため、正常な赤血球が作れない鎌状赤血球症を患っていた。体から血液幹細胞を取り出し、体外でゲノム編集して戻した。長年の苦しみから解放されたといい、「子どもたちが母を失う恐れはなくなりました」。この治療を開発した米欧の企業は米食品医薬品局(FDA)に承認申請している。

 遺伝子の変異が原因の病気は…

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