埋もれていた「福田村事件」 森達也監督の映画での新たな問いかけ
9月に公開される森達也監督の映画「福田村事件」。今年100年を迎える関東大震災の際の虐殺事件を描いています。
長く歴史に埋もれていたこの事件は、どのように掘り起こされたのか――。本や歌で、記憶をつないできた人々の話です。
現場へ! 関東大震災と朝鮮人虐殺
事件は長く埋もれていた。
関東大震災発生5日後の1923(大正12)年9月6日、千葉県福田村(現野田市)で起きた「福田村事件」。香川県の被差別部落から来た薬の行商団15人のうち、幼児や妊婦を含む9人が惨殺された。讃岐(さぬき)弁を話す一行が朝鮮人と決めつけられ、警察官に「日本人だ」と言われても納得しない自警団から、棒の先に金具がついた道具「とび口」や猟銃で襲われ、遺体は利根川に流されたという。
真相究明の動きは、70年代末に千葉県で、次いで犠牲者が香川県出身者らしいと分かった80年代初めに香川県で始まった。震災80年の2003年、野田市の現場近くに「追悼慰霊碑」が建てられた。
映画監督の森達也(67)は新聞記事で事件を知った。ドキュメンタリー番組を企画して複数の民放局に提案したが、どこからも断られた。一連の経緯を随筆集「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」に書いた。
森の著書で事件を知ったフォ…
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- 【視点】
先月末、大阪で行われた、この作品の試写会に参加した。〈最も印象深かったのは、殺害された行商の親方が言い放つ、ある言葉だという〉。私の心に刻み込まれたのも同じシーンだ。 それにしても、この映画「福田村事件」が生まれるまでに、森達也監督をは
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