土地の売買情報は誰のもの? 裁判所の開示要求を不動産鑑定士が拒否

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松浦新
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 固定資産税の評価が高すぎるとして、住民が長野県安曇野市を相手に引き下げを求めている裁判がある。長野地裁が鑑定評価額の根拠となる「取引事例」の所在地などを示すよう担当の不動産鑑定士に求めたところ、守秘義務を理由に拒否して、評価額の検証ができない状態になっている。

 問題なのは、土地の売買情報である取引事例が「ブラックボックス」で、外部からは分かりにくいことだ。

 土地の固定資産税の評価額は、地区を代表する「標準宅地」の評価額をもとに税率をかけて決まる。不動産鑑定士は、近隣で実際にあった三つの取引事例を用いて算出することになる。しかし、公表されるデータは、取引時期やおおよその面積、1平方メートルあたりの取引額で、肝心の住所は伏せられている。

 取引事例とは、春に公表される公示地価や秋の基準地価の調査のために、国から不動産の買い主の情報が提供され、国土交通省の委託を受けた「日本不動産鑑定士協会連合会」が当事者にアンケートをして集めたものだ。公的地価の算定だけでなく、民間の不動産鑑定や、自治体の固定資産税の評価にも使われている。

 税金で集めた取引事例なのに、裁判所が開示を求めても応じないのはどういうことなのか。

地区外の取引事例を使った?

 原告が所有する土地の周辺は…

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この記事を書いた人
松浦新
経済部
専門・関心分野
不動産、IT、社会保障