「甲子年」銘の鉄刀、熊本で発見 古代の支配システム知る手がかりに

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編集委員・中村俊介
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 紀元604年を示す干支(えと)「甲子年」の紀年銘を刻んだ鉄刀が、このほど熊本市で確認された。国内にまとまった文字記録の少ない古墳時代、剣や刀などに残された文字は当時の社会情勢を知る手がかりだ。日本列島の隅々に中央政府の手が及ぼうとしていたころで、「甲子年」銘鉄刀はそのプロセスを解き明かす新資料となる。

 鉄刀の出土地は、古代の横穴墓群があったとされる熊本城内の旧NHK跡地。昨年、同市と熊本大の合同調査で見つかった。

 全長55センチ。さびに覆われているが、X線CTスキャンで透視すると「甲子年五□□」(□は不鮮明な部分)と象眼された6文字が浮かんだ。最後の2文字は「月」「中」とみられ、製作時期らしい。

 元号がなかった古墳時代は年号の表記に干支を用いることが一般的で、「甲子」年は60年ごとにめぐってくる。同市によると、鉄刀の形状から6世紀終わりから7世紀にかけての製作とみられ、「甲子年」は604年の可能性が高いという。紀年銘の刀剣類は国内で10例に満たず、古代国家の成り立ちや社会構造、地方支配の実態解明につながると学界からの期待も大きい。

 とはいえ、刻まれた文言はご…

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この記事を書いた人
中村俊介
編集委員|文化財・世界遺産担当
専門・関心分野
考古学、歴史、文化財、世界遺産