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リクルートのオンライン就活セミナー、質疑応答で社員が「サクラ」

吉田貴司
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 リクルートが運営する大学生対象の就職活動に関するオンラインセミナーで、同社の社員が学生を装って質問する行為を繰り返していたことがわかった。社員たちはこうした行為を「サクラ」と呼び、一部では上司が指示するケースもあった。同社は少なくとも20件のセミナーで行われていたことを認め、「不適切であり、大学や学生に不誠実だった」としている。

 同社によるとセミナーは、就活の動向やエントリーシートの書き方などを伝える内容で、学生の参加は無料。大学からの依頼を受けて実施するものもある。

 同社は、オンライン形式に切り替えた後の2021年4月以降、「サクラ」といった言葉を用いて質問を書き込むことを、社内のコミュニケーションツール上で社員が打ち合わせていたセミナーが20件あったことを確認し、関係者に聞き取りもしたという。20件以外でも行われていた可能性について「否定できない」としている。

 セミナーでは質疑応答の際、同社大学支援推進部(現・学生キャリア支援推進部)の社員が「イベントには私服で参加してもよいですか」「インターンシップは何件ぐらい行ったらいいですか」などと書き込んでいたという。

 関係者によると、事前にチーム内で「サクラ役」を決めて質問させたり、登壇者が手元のスマートフォンで質問し、自ら回答する一人二役をしたりしていた。

 社内のコミュニケーションツールで、上司が「質問は、まずサクラしこんでね」と指示を出すこともあった。社員たちは「サクラのみなさんに救われました」などとやりとりしていたという。

 同社広報は取材に「オンラインセミナーは質問しづらい雰囲気になりがちなことが課題だった。学生の皆さまにより有益な時間にするために、質問しやすい雰囲気にするためのきっかけ作りとして行っていた」と説明。一方で「メンバーの一部が、セミナー内の質疑応答の際に、参加学生として質問を投げかけていたこと、またこうした行為を『サクラ』という表現を用いていたことについては不適切だった」と認めた。5月上旬に担当部署全体に「注意喚起をした」という。

 リクルートの就活サービスをめぐっては、2019年に「リクナビ」の閲覧履歴を元に就活生約8千人分の内定辞退率を予測して、同意を得ずに企業に販売し、個人情報保護委員会から改善勧告を受けた。同社は「ガバナンス不全だった」としてサービスを廃止した。

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    高橋末菜
    (朝日新聞経済部次長)
    2023年6月5日17時1分 投稿
    【視点】

    新卒の就職活動は学生側からみると不透明なことが多いといえます。 ルールは有名無実化し、水面下で物事が進んでいるケースも。6月1日の採用解禁までに7割の学生が内定を持っている、という数字があります。公然と採用活動を進めている企業もある一方で

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