大阪府が打ち出したすべての高校授業料の「完全無償化」案について、私立学校などから教育の質の低下を懸念する声があがっている。制度に参加すれば、年60万円を超える授業料は学校の負担となるためだ。識者も経営の圧迫が教育現場に悪影響を及ぼす可能性を指摘する。(箱谷真司、岡純太郎、丘文奈)

 「(日本は)世界と比べたら、全体的に教育への投資は圧倒的に遅れている。人への投資は、最後、国に返ってくる」。吉村洋文知事は10日の記者会見で、完全無償化の意義をこう強調した。

 府が制度の素案を発表したのは今月9日。親の所得や子の人数に制限をなくし、2026年度までに府内のすべての生徒の授業料を無償化する内容だ。府外の高校に通う府民も対象で、都道府県での高校の完全無償化は全国で初めてだという。

 今回の無償化は、4月の府知事選で吉村氏が公約として掲げたものだ。

 これまで府は国の支援制度に上乗せし、私立高校では年収590万円未満の世帯などが無償化されてきたが、今回少なくとも年382億円の公費を投入し、所得制限の撤廃に踏み込んだ。吉村氏は選挙後、すぐに具体化の指示を出した。

「完全無償化」崩れる可能性も

 ただ、現制度では年収800万…

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