辻立ちでハラスメント、妻とは口論 走り抜け感じた「選挙の暴力性」
連載「妻が立候補しました」(下)
「やりたくないことはやらない。体力がある人しか当選できないような例を作りたくない」。妻はよくそう言っていた。今後、女性の政治家が増えていくために、あしき例を作りたくない。
しかし結果的に、私たちがやっていたのはまさに、よくある方法だったと思う。
早朝から駅に立ち、地元にごあいさつをしながらポスターを貼る。午後はスーパーを回り、夜も駅に立つ。ドブ板とまでは呼べないかもしれないが、決して体力があるとは言えない妻にとっては、楽ではない活動をしていたと思う。とはいえ、もともと知名度ゼロの彼女にとって、他の方法はとりようがなかった。街頭に立ったのは、平均すると週に3~4日ほどだったが、妻も私も日に日に疲れていった。
自らの意思で手伝っていたとはいえ、自分の仕事を半分以上犠牲にしていたストレスは相当なものだった。仕事も子どもを寝かしつけてから行うので、常に寝不足だった。
日に日に増える妻との口論
自分の活動に必死な妻との口論も日に日に増え、毎日のようにけんかしていた。幼なじみの議員が言った「選挙離婚って結構あるんだよ」という言葉を、何回も頭の中で反芻(はんすう)した。
確かに選挙は民主主義の根幹ではあるが、どんな仕事よりも尊いとは思えない。しかし選挙という「公さ」ゆえに私自身が遠慮して自分を犠牲にしてしまう、そんな己の自尊心の低さを嫌悪した。
辻立ちは、ハラスメントとセットとも言える。
ある時、妻に叫んできた男性…