「軽く考えているのか」 創価学会幹部が自民に迫る衆院選候補者調整

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野平悠一 藤原慎一 白見はる菜
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 次期衆院選から小選挙区が都市で10増え、地方で10減る「10増10減」にからみ、自民党公明党間の候補者調整が最終局面を迎えている。公明が熱望する東京28区(練馬区東部)での擁立を自民は認めない方針を固めたが、公明も引く様子はみえない。20年を超える連立関係に深い亀裂が生じている。

 「ちょっといいですか」

 9日、自公両党の幹事長と国会対策委員長同士が国会内で会談後、退出しようとした自民の茂木敏充幹事長を、公明の石井啓一幹事長が呼び止めて、言った。

 「東京で2人擁立し、比例と重複立候補にします。自民の推薦はいりません」

 東京で2人擁立とは、公明がすでに29区で公認を発表した現職の岡本三成衆院議員と、新たに擁立を希望する28区を指す。

 石井氏はさらに続けた。「かわりに(東京の自民候補)28人を推薦しません」

 自民の推薦が得られなくても東京の二つの選挙区で候補者を擁立し、かわりに東京全30選挙区の残り28の選挙区で自民が擁立する候補者を公明は推薦しない――。長年続けてきた選挙協力を曲げてでも、東京で要求を通す意思の「通告」だった。

 いま東京で公明は選挙区1人、比例区2人の計3人の国会議員がいる。自民の推薦なくしては公明が選挙区で当選するのは厳しい見通しがあり、茂木氏が即座に石井氏に聞き返した。

 「比例とあわせて3人当選できるのに、そんなやり方ではかえって公明は議席を減らしかねないですよ」

 石井氏は一転、「私に言われても……」と黙り込んだ。

 石井氏の態度が物語るように、公明執行部に候補者調整の主導権はなく、支持母体の創価学会の強い意向を体現しているに過ぎないと自民はみている。候補者調整の実権は、ある学会幹部が握っていると複数の自公議員が口をそろえる。

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    蔵前勝久
    (朝日新聞政治部次長)
    2023年5月21日12時9分 投稿
    【視点】

    そもそも見出しに、記事に書かれていることの異例さが凝縮されています。「公明幹部が自民に迫る」なら分かるのですが、「創価学会幹部が自民に迫る」ですから。  公明のホームページにある「よくある質問」の最初項目は、「公明党と創価学会の関係は?政

    …続きを読む