手話×音声、一緒につくる演劇 ろう者と聴者で新しい表現に挑戦

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増田愛子

 演劇の世界で、ろう者の言語である手話を情報を伝える役割だけではなく、「表現」として考えた作品が生まれている。聴者の作り手や観客にも、新たな出会いをもたらす。

 昨秋、神戸市立の神戸アートビレッジセンター(KAVC、現・新開地アートひろば)で上演された、シーラッハ作の法廷劇「テロ」。ハイジャックされた旅客機を撃墜した空軍少佐を巡る白熱のやりとりが、二つの言語で同時に展開された。

1人の人物、ふたつの言語で表現

 聴者が音声による日本語、ろう者が独自の文法を持つ日本手話で、1人の人物を演じる形の舞台。異なる言語のはざまから人間の多面性や内面の揺らぎが浮かび、客席では手をたたく拍手と、ヒラヒラさせる手話の拍手、両方が起きた。

 演出した劇作家、ピンク地底人3号さんは聴者。視覚言語として関心を抱いたのを機に日本手話を学び、公演での情報保障や、ろうの俳優との創作を行っている。ろう者女性とその家族を描く「華指1832」(2021年)は、日本手話を主言語に作劇。ろう者の役はろうや難聴の俳優が演じた。「私は戯曲を俳優にあて書きするので、彼らとの出会いは大きかったです」

 KAVCの企画公演を依頼された際、この経験が方向性を決めた。1人を除き公募で選んだ出演者計11人はろう者、聴者、全盲者と意思疎通の方法も様々。手話通訳者などの支援も得て、通常より長い約5カ月間、稽古した。

 観客からは、手話表現の豊か…

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