新聞協会、生成AIに対する見解表明「記事や写真の無断利用を懸念」

村井七緒子
[PR]

 国内123の新聞社、通信社、放送局が加盟する日本新聞協会(会長=丸山昌宏・毎日新聞社会長)は17日、ChatGPTチャットGPT)など生成AIによる報道関連コンテンツの利用に対する見解を公表した。記事や写真が無断でAIに利用されたり、AIがつくる偽情報や世論を誘導する情報がインターネット上に拡散したりすれば、民主主義を支える健全な言論空間を混乱させると警鐘を鳴らしている。

 新聞協会の公表文書は、AIの生成物は不正確な情報を含む可能性があるうえ、短時間に大量の記事を生成できるため、偽情報や政治的意図をもって世論を誘導する情報が大規模に拡散する恐れがあると指摘。無秩序な開発は言論空間の混乱や社会の動揺を招きかねず、「民主主義を守る意味でも看過できない」と明記した。

 AIの学習のために、どの報道コンテンツが利用されているかの実態が不透明であることも指摘。生成AIがネット上の報道記事や写真を無断で取り込み、第三者にサービス展開すれば、報道各社が持つ著作権など法的権利を侵害する恐れがあるとした。

 無秩序な利用が既成事実化すれば報道機関の経営に打撃を与え、良質なニュースを提供し続けられなくなるとの危機感も示した。報道業界のみならず、文学作品や映像、音楽などクリエーター業界共通の課題になると説明。「著作権法個人情報保護法を含めた法制度全体の観点から、生成AIが社会と調和するものとなるよう、制度的対応を急ぐべきだ」と政府に要望した。

 米国の新聞協会にあたるニュース・メディア・アライアンス(NMA)も先月、「AI原則」と題した開発者や政府に対する要望書を公表。報道機関などのコンテンツの無許可の使用は「盗んでいることになる」として、生成AIへの利用には明確な許可が必要だと主張。メディア各社は生成AI開発者らに「公正な補償を交渉する権利を持つべきだ」としている。(村井七緒子)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら