SNS時代と「オシント」 戦争報道、市民との協働で活性化を

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山腰修三のメディア私評

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始から1年以上が経過した。戦争の長期化によって論点が多様化し、私たちの感覚も摩耗しつつあるようにも見える。そこで、SNS時代の戦争と情報環境、そしてジャーナリズムとの関係について改めて考えてみたい。

 ウクライナ侵攻をめぐって、このテーマとの関連では三つの側面が注目されてきた。第一はフェイクの問題である。周知の通り、ロシアが近年さまざまな領域でフェイクニュースを拡散させる情報戦を展開してきたと言われており、この点については早い段階から意識されてきた。第二は、「戦場」を撮影した大量の動画や画像の流通である。これらは両国の兵士がSNS上に投稿したものだけでなく、攻撃を受ける一般市民が撮影・投稿したものも含まれる。被害の様子が今回ほど可視化した戦争はこれまでなかったといってよい。そして第三は、これら2点の帰結としての「OSINT(オシント)」へのさらなる注目の高まりである。

 オシントとは「open source intelligence」を指し、インターネット上などに公開されている情報を調査・分析する手法を意味する。この言葉はベリングキャットの活動を介して広く知られるようになった。この調査集団は、グーグルマップなどインターネット上のツールを駆使しながらSNSに投稿された動画や画像からさまざまな情報を引き出す「ネット探偵」である。2014年のマレーシア航空17便撃墜事件をめぐり、ロシアからウクライナ領内に持ち込まれたミサイルが使用されたことをオシントによって指摘した事例が有名だ。

 そして今回の戦争ではベリングキャットにとどまらず、多様な組織や一般市民がオシントを実践するに至った。それらの実践は、ロシア側のフェイクを検証するものや、SNSの投稿や衛星画像から戦況、被害や戦争犯罪を明らかにするものなど、多岐に及ぶ。

 ここで留意すべきは、一連の…

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