AIが心を読む? 脳内の思考を文章化する「解読機」を開発、米研究
考えていることが他人に知られてしまう……。そんなSF作品のような未来が近いのかもしれない。米テキサス大オースティン校の研究者らが、脳内のイメージを「解読」し、文章に変換することに成功したと発表した。あらかじめ被験者の脳活動を学習した人工知能(AI)を使って、その人が新たに聞いたり想像したりしたことの大まかな意味を予測できたという。
研究チームはまず、AIに人間の脳活動を学ばせた。血流から脳の活動を読む機能的磁気画像共鳴法(fMRI)を3人の被験者に使い、それぞれ、5~15分の物語を計16時間分聞いてもらった。
次に、同じようにfMRIを使いながら、同じ3人の被験者に、新しい物語を聞いてもらった。学習済みのAIには、脳活動データだけを与え、物語の内容を予測させた。予測結果はまるで映画の字幕のように、連続した文章で出力される。
結果は偶然の一致以上の成果だった。
たとえば、実際の物語が「その夜、私は、かつて寝室があった上の階に行き、他にどうすればいいかわからず、電気を消して床に寝転んだ……」だったのに対し、学習したAIが予測した物語は「私は寮の部屋に戻った。寝ようと思っていたベッドがどこか分からず、かわりに床に寝転んだ……」だった。細かな違いはあるが、大まかな内容は似ている。
二つの文章の類似度を測る指標を評価すると、どの指標でも、たまたま似た文章ができる場合の値を大きく上回った。この一致は一時的なものではなく、物語を聞いている時間の72~82%を占めた。
被験者が頭の中だけで物語を想像したり、無音のアニメーションを見たりしても、AIによる予測が可能だったという。
脳内の考えを読みとり再現できれば、病気などで意思疎通ができなくなった人のコミュニケーション手段になる。これまでに、効果が実証された装置もあるが、脳に電極を入れる必要があったり、手術のいらないfMRIを使う手法だと少数の選択肢から一つ選ぶような使い方が限界だったりした。
今回チームは、手術のいらないfMRIでも、AIの学習と組み合わせることで、知覚したり想像したりしたことの内容を文章化できると示した。論文で、「(脳と機械をつなぐ)ブレーン・コンピューター・インターフェースにとって重要な一歩となる」としている。
論文は、5月1日付の科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」で発表された。
7の倍数、動物の名前… 解読を「妨害」するには?
心配になるのが、この技術で、他人に思考を読まれたり、うそ発見器のように使われたりするのではないか、という点だ。
論文の著者で、米テキサス大…
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