図書館蔵書のネット送信認める新制度が施行 補償金は最低500円

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神宮桃子 田中ゑれ奈

 図書館が所蔵資料の一部分をメールなどネットで利用者に直接送れるようにする新制度が、6月1日に施行された。利用者が負担し著者や出版社に支払われる補償金は、1冊の一部分の利用で最低500円と決まった。実際の運用には手間がかかり、サービスを始める図書館がどれくらいあるかは見通せない。

 図書館は現在、蔵書の内容の一部(著作物の半分まで)を紙に複写するサービスを提供している。デジタル化推進やコロナ下の図書館休館などを背景に、利用者のパソコンやスマートフォンなどで読めるよう、サービスをネット送信に広げる改正著作権法が2021年に成立した。

 流通している本が端末で読めることになり、権利者保護のため補償金が設けられた。出版や新聞などの団体でつくる補償金管理協会が申請した額を今年3月、文化庁長官が認可した。

雑誌は要件厳しく 発行後1年間は送信禁止

 書籍の補償金額は、本体価格を総ページ数で割った数に、送信するページ数と10をかけて算出する。例えば、本体価格が千円で100ページある書籍のうち10ページ分の送信を希望する場合、「1000÷100×10×10」で千円となる。本体価格がわからない場合は1ページ100円とする。この計算で500円を下回る場合は、500円とする。新聞や雑誌は、1ページ目を500円とし、2ページ目からは1ページ100円とする。補償金のほかに、図書館が手数料をとることもありうる。

 著作権法では「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」にはネット送信できないとしており、出版社や図書館など関係者が指針を整備した。紙の複写と同様、送信できるのは原則著作物の半分までとした。雑誌については、紙の複写よりも要件を厳しくし、発行後1年間は送信を禁止する。

 新制度は、職員の研修など要件を満たした図書館が、6月1日以降に実施できる。ただ、実際に図書館がサービスを始めるのはまだ先になりそうだ。国立国会図書館は24年度の実施を目指すという。

「骨抜き」「大混乱」の声も

 管理協会の加盟団体である日…

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