不要品から広がる「ありがとう」 リユース作戦は民の力と

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編集委員・伊藤裕香子
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アナザーノート 伊藤裕香子編集委員

 後ろめたい気持ちが、少し和らいだ。

 「不要品持ち込みスポット」に1月末、実家にあった金属製ラックを車で運んだときのこと。男性スタッフから「これは便利に使えそうですね」と声をかけられた。

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 財布やメモ帳などの小物の仕分けにと、亡き父が長く愛用していた。まだ十分にきれいでも私には使い勝手がいま一つで、もらってくれそうな知人は思いつかない。

 捨てるにはもったいないし、そのまま置いておくのも場所をとる。

 ネットで調べ、東京都世田谷区が地域情報サイトのジモティーに運営を委託する、このスポットにたどりついた。

 持ち込みは区民限定の予約制で、次の人が「気持ちよく使えるもの」かどうかが基準になる。この日は、果実酒などを漬け込むほぼ新品の瓶二つや、子どもだった自分が何十年も前に使った白い棚をきれいに拭いて、持ち込んだ。木製で重めの引きだしがスムーズに出し入れできるかどうか、スタッフが確認してくれた。

 スポットの一角が、いわば「店」になっている。ベビーカー、椅子、衣装ケース、ゴルフのクラブや電子ピアノなど、家にあるような品々がまさによりどりみどり。どれにも値札がついている。

 区民がここに持ち込んだ「不…

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この記事を書いた人
伊藤裕香子
編集委員
専門・関心分野
税財政、くらしと消費、地方経済