アフリカで日本優位の「思い込み捨てよ」 成長市場で存在感増すには

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聞き手・今泉奏

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)を前に、岸田文雄首相が29日から、初のアフリカ外遊へと向かった。「グローバルサウス」としても存在感を増す巨大な大陸で、日本政府や企業は何ができるのか。日本貿易振興機構(ジェトロ)の平野克己・上席主任調査研究員に聞いた。

 ――今回のアフリカ歴訪の意義をどう見ますか。

 「岸田政権は当初、新型コロナ禍の影響もあって外交の方向性が見えなかったが、だんだん明らかになってきたと思う。G7サミットを前にして、おそらくは安倍政権を踏襲する方向性で、アフリカ外交における存在感を維持するということだろう」

 「トップ外交は、直接訪れるだけで意味がある。広島G7前に『グローバルサウス』の声を確認しておくということだろうが、今回の訪問先は意思疎通しやすい国々で、現下の問題や国際的な齟齬(そご)を調整するという感じではなさそうだ」

 ――訪問国の特徴はどう見ていますか。

 「ガーナは、アクフォアド政権が自動車を基幹産業にしようと力を入れている。日本からはトヨタ自動車の組み立て工場も入っている。ただし、債務問題が深刻で事実上のデフォルト(債務不履行)状態。日本が債務救済に向けてどんな支援ができるのか注目している」

 「ケニアは、日本にとってアフリカビジネスの入り口とも言える国。モザンビークでは、日本のアフリカ投資では最大規模の沖合ガス田開発が進んでいる。エジプトは日本とほぼ同規模の人口を抱え、地政学的にも重要な位置にある。エルシーシ政権は安定しており、ビジネス志向も強い」

「こんな市場どこにもない」

 ――アフリカにおける日本の存在感は、どのような状況ですか。

 「日本経済は停滞しているとはいえ、国内総生産(GDP)は世界第3位だ。だが、アフリカでは貿易投資とも上位10カ国に入らない。これはアフリカ側の問題ではなく、日本企業の問題。グローバルに活躍できる日本企業の数がきわめて少ないからだ」

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 「概して日本企業は、安定し…

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2023年4月29日22時30分 投稿
    【解説】

    平野さんの「概して日本企業は、安定していて有望な国を探そうとするが、それではダメだ」の一言に尽きる。日本はODAという政府による「援助」であって「投資」ではない。投資をするのは企業であり、企業はリスクを取って新たな市場を開拓していかなければ

    …続きを読む