難民申請「クルド人にとって最後の命綱」 入管法改正案の見直し訴え

仙道洸
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 不法残留する外国人らを送還しやくする内容の入管難民法改正案の審議が衆議院で始まったことを受け、埼玉県川口市や蕨市に暮らす20人ほどのクルド人が16日に記者会見を開き、改正案の見直しを求めた。会見したクルド人男性は「(法改正は私たちに)帰れと言っているようなもの。私の人生がめちゃくちゃになってしまう」と訴えた。

 現行の入管法では、難民認定の手続き中は、国外への送還が停止される。一方、改正案では、3回目以降の難民申請者は手続き中であっても送還されることが可能としている。

 県内には、川口市と蕨市を中心に「国を持たない最大の民族」といわれるクルド人が約2500人暮らすとされる。大半がトルコで迫害を受け逃れてきた人たちとその家族で、ほとんどが難民申請をしているとみられる。

 難民申請中といっても、6カ月ごとに更新が必要な特定活動の在留資格がある人もいれば、資格を失っているものの入管施設への収容が一時的に解かれた「仮放免」状態の人たちもいる。会見したクルド人のほとんどは、2回以上の難民申請をしていた。改正案が成立すれば、本国に強制送還される可能性がある。

 会見に出た大学1年の男性(18)は2歳の頃、トルコから迫害を逃れて両親と来日した。日本の学校に通い、今春から大学生になった。トルコ語やクルド語は話せない。4回目の難民申請中で、仮放免状態だ。友人にも仮放免のことは明かしていないという。「もしトルコに送還されることになれば生活ができなくなる。どうなってしまうのか、不安に思いながら日々暮らしている」

 そもそも、現状でもクルド人の難民申請はほとんど認められていない。出入国在留管理庁によると、昨年の難民申請者数は3772人で、認定されたのは202人。一方、クルド人も含まれるトルコ国籍の難民申請者は445人だったが、認定されたのは1人だけだった。

 在日クルド人を支援する大橋毅弁護士は、難民認定者が少ないクルド人にとって、難民申請で送還を免れようとする手段は「最後の命綱のような制度」と指摘する。「法案が通れば、安全が保障されなくなる。止めてもらえるのは世論しかない。助けて欲しい人がいるということを知ってほしい」と訴えた。(仙道洸)

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